大手インターネット企業が共同で迷惑メールの送信者を訴えたというニュースは、業界が一致団結してスパムと戦おうとしていることを示すものだった。しかし、スパム防止の意味でははるかに効率がよいと思われる標準技術の開発に関しては、協調の動きはほとんど見られない。
3月初旬、America Online(AOL)、EarthLink、Microsoft、Yahooの4社は、スパム送信者を相手取って初の共同訴訟を起こし、大きな話題を呼んだ。4社は、偽のメールアドレスを使ってメールを送信することが、最近成立した連邦スパム対策法(Can-Spam Act)の違反にあたるとして、誰だかわからない数百名の被告を訴えた。
その一方で、スパム対策技術の標準仕様に関しては、4社の意見は一向にまとまる気配がない。なかでも、スパム対策の肝となるメールの偽造防止技術に関しては、4社のうち3社までが競合する技術を支持している有様だ。
今回の訴訟は4社が反スパム団体を結成してから1年もたたないうちに行われた。しかし、スパム対策に取り組んでいる専門家の間では、肝心の技術標準の進捗を問う声があがっている。
「昨年4月のスパム会議(反スパム団体の結成が発表された米連邦取引委員会の会合)で華やかに掲げられた平和と愛の世界はどうなったのかと聞きたい」とePrivacy Groupの最高プライバシー責任者Ray Everett-Churchはいう。
スパムは消費者の頭痛の種となり、企業に悪夢をもたらしている。米国の企業はスパムのおかげで、セキュリティ、人材、生産性において年間約10億ドルものコスト負担を強いられているのだ。また多くの企業がメール全体に占めるスパムの割合を少なくとも50%と見積もっており、最大でその割合は90%にまでのぼるとされている。
IETF(Internet Engineering Task Force)は先日、早急にワーキンググループを設置し、ドメインネームシステム(DNS)ベースのメール認証システムの確立を進めることで合意した。ワーキンググループの活動は、スパム対策標準技術の協調的な策定を加速させることになるだろう。
しかし、スパム対策を推進している人々は、ことスパム対策標準の策定となると、業界はおどろくほど非協調的だという。
スパム対策技術同盟(Anti-Spam Technical Alliance)の結成から数カ月の間、少なくとも目に見える範囲では、成果はないに等しかった。技術面では、同盟の活動は停止状態にあったといえるが、加盟各社はそれぞれ忙しい日々を送っていたようだ。
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