ここでは誰もがパイロット--仮想世界のヒコーキ野郎たち

文:Daniel Terdiman(CNET News.com) 翻訳校正:DNAメディア2007年01月12日 16時46分

 チャーター便のパイロットであるTravis Faudree氏は、安全最優先のパイロットを自負している。しかし、時には悪天候の中で腕を試してみたいと思うこともある。思いが抑え切れなくなると、同氏はある場所へ赴く。

 Faudree氏が行くのは、あるウェブサイトだ。「Virtual Air Traffic Simulation Network(VatSim)」という、フライトシミュレーションネットワークのコミュニティ。無料で利用できる同コミュニティには、パイロットにあこがれる人々や本職のパイロットが大勢集っている。彼らはパーソナルフライトシミュレータを使用し、多人数参加型グローバル航空システムでリアルタイム接続されている。

 VatSimではすべてがバーチャルなので、参加したパイロットが荒れ狂う空での操縦を楽しんでも、まったく問題ない。

 「霧、雪、雨による低雲高や低視程といった悪天候は、バーチャルパイロットにとって魅力的に映るようだ」とFaudree氏は言う。彼はサウスカロライナ州ヒルトンヘッドから参加している。「例えば、『Nor'easter』(米国東海岸で発生して暴風雨をもたらす大型低気圧の通称)が先日発生したときは、VatSimのパイロットたちは、その進路を毎夜ぴったりと追っていた。ある晩はマイアミに殺到し、その数日後には、はるかボストンのジャクソンビルという具合だ」(Faudree氏)

 VatSimの他のパイロットたちもこれに同意する。そして、実生活にこれほどの危険が存在しないことが、パイロットたちを引き付け、劣悪な環境を飛びたいと思わせる理由だと指摘する。

 「ハリケーンが米国に上陸するとなったら、その上陸地を目指す航空機の数は20を下らないだろう」と、ジョージア州ロズウェルに住む33歳のソフトウェア開発者、Luke Kolin氏は言う。「ボーイング777でハリケーンに突っ込み墜落したとしても、実際に悪いことが起きるわけではないのだから」(同氏)

 架空の悪天候を飛べるという点もそうだが、本物のパイロットにとって特にありがたいのは、日常の業務では体験できないであろうさまざまなシナリオをバーチャルに再現できることだ。

 Faudree氏は説明する。「私の場合、操縦技術を維持するために複雑な計器進入を練習している。こういったことは、初めての実地トレーニングのときにシミュレータで体験したが、実世界で練習する機会はない」

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