Robert Tur氏の主張が認められれば、YouTubeはまもなく法廷で報いを受けることになるだろう。
ヘリコプターの操縦士でありジャーナリストでもあるTur氏は、自分が著作権を持つ映像に対する著作権の侵害を助長したとして、YouTubeを訴えていた。ロサンゼルスの連邦裁判所に提訴された内容によると、Tur氏が1992年に撮影したロサンゼルスの暴動のビデオが同氏に無断でYouTubeに掲載され、1000回以上ダウンロードされたという。YouTube側は、Tur氏の主張は「無意味である」としている。
急増する動画共有サイトについて調べている人たちから見ると、今回の訴訟は当然で、YouTubeなどのサイトがよく今まで訴訟を起こされず済んでいたことにむしろ驚いているようだ。ユーザーが作成した動画のホスティングサービスを提供する会社は、2005年、150社以上設立されたが、その大半はユーザーが投稿する動画を事前にチェックしていない(ただし、YouTubeも含めて大半のサイトは、著作権を侵害する行為を禁止する旨を利用規約に明記している)。こうしたサイトに批判的な人たちは、著作権者以外により投稿されている動画があまりにも多い、と指摘する。
アマチュアビデオ制作者Steven Voltz氏は、「YouTubeのサービスは気に入っている」と言う。だが、同氏は、自分の作成した動画をいくつか無断でYouTubeに投稿されたこともある。「YouTubeの場合、著作権保護されているコンテンツの削除手順は簡単とはいえない。そして、それはYouTubeにとって好都合な結果となっている」(Voltz氏)
こうしたトラブルに対応するための法律はいくつかある。Digital Millennium Copyright Act(DMCA)には、著作権違反に対抗するため何らかの規約を設けなければならないと明記されており、YouTubeもそうしたルールに従うために努力しているという。しかし法律の専門家たちは、この新しい市場にDMCAなどの法律を適用する方法について裁判所が最終的に判断を下す必要があるのかどうか疑問視している。
そうした規制は、伸び盛りの動画共有サイト市場を停滞させることにもなりかねない。多くのサイトではようやくビジネスモデルを見つけ出し始めたところだ。今、訴訟に巻き込まれて高額な裁判費用を払わされたり、厄介な著作権保護手順の実装を強制されたりするようなことになれば、立ち上がりはじめたばかりのこの新しいビジネスが消滅してしまう可能性もある。
「いつかは提訴されると思っていた」とサンフランシスコに本拠を置く動画共有サイトGUBAの最高経営責任者(CEO)、Tom McInerney氏は言う。「われわれとしては、法律で要求されている以上の労力を払って、著作権保護されている動画が最終的にサイトに流れつく(掲載される)ことがないようにする必要があるだろうと感じている。ただし、法的義務が大きすぎて、サイトの閉鎖に追い込まれるような事態だけは避けたい」(McInerney氏)
一部の法律専門家たちは、YouTubeがこうした訴訟に巻き込まれたことにまったく驚いていない。2006年2月、NBCは、YouTubeに対して、テレビ番組「Saturday Night Live」の映像をサイトから削除するよう求めた。
YouTubeに対して批判的な人たちは、著作権侵害でYouTubeが得をしていることを示す良い例だと、この件について指摘する。それまであまり知られていなかったYouTubeは、NBCとの騒ぎで全米に注目されるようになった。しかし、YouTube側は、NBCから抗議を受けたすぐ後に問題の映像をサイトから削除し、「こうした問題、あるいはそれに類する問題が起こったときのわれわれの対応を見てもらえば、われわれが著作権の保護にいかに真剣に取り組んでいるかが分かる」と主張した。
「われわれは、多くのコンテンツ所有者から、最も協力的で対応の早い動画共有サイトであるとの評価を受けている」と、YouTubeの法律顧問であるZahavah Levine氏は、CNET News.comのメールインタビューに応えて語った。
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