創造的な芸術、科学、技術の交点を模索するIBMと南カリフォルニア大学による共同プロジェクトの第1回のイベントで、IBMの5人の科学者が2050年には人間の生活がどのようになっているかという予測を披露した。
このハリウッド映画のようなテーマに沿って、パネルの進行役であるBill Pulleyblank氏は、「Mini Cooper」の自動車はアポロ13号よりも多くの演算能力を持っていると指摘した。そして、アポロ13号は「もう少しでTom Hanksが死にかけた」宇宙カプセルであると1995年の同名の映画に言及した。
Pulleyblank氏は、世界の最も強力なスーパーコンピュータの上位10台のうちの4台を数えるIBMの「Blue Gene」システムの開発を率いた。2050年までには、これらの巨大なスーパーコンピュータに搭載されている能力は、手のひらの大きさに収まるようになるだろうと同氏は予測する。
IBMのグリーンリサーチイニシアチブを率いるSharon Nunes氏はIBMのComputational Biology Centerを立ち上げた経歴を持つ。Nunes氏は2050年までには、クリーンな水とエネルギーが地球全体で利用できるようになると予測する。
Nunes氏は地球が直面している重大な問題を解決する方法として、合成生物学とシステム生物学に着目している。「われわれは自然と、40億年余の知識から学ぶ必要がある」とNunes氏は指摘した。
Nunes氏は光合成の化学的、生物学的なプロセスの知識を応用して太陽電池を開発したり、藻を環境的にやさしい燃料に変換したりする事例を挙げた。「われわれは(こうした開発の)規模を拡大して、それらを手ごろなコストで利用できるようにする方法を学ばなければならない」(Nunes氏)
Don Eigler氏はIBMの科学者であり、1989年には自身が作った液体ヘリウム温度走査型トンネル顕微鏡を使い、少数のキセノン原子を取り出して「IBM」とつづることに成功した。Eigler氏の2050年の予測では、生延長に役立つ埋め込み技術とナノスケール技術に着目している。
「今日の研究所では、再生医療に使用できる新しいナノメートル規模の構造物を組み立てる方法を発見しつつある」とEigler氏は述べた。Eigler氏は、この技術は今後10〜15年で花開き、最終的には人体に薬局が内蔵され、内部センサの数値に基づいて自動的に薬品を投与するようになると考えている。
Eigler氏はまた、パラレルヒューマンプロセッシングについても論じた。パラレルヒューマンプロセッシングとは、人間が意識して一度に2つの問題について考えられることを指す。この能力は訓練によって、または人間と共生する埋め込み機器によって実現できる。
「この種の人間能力の増大によっていくつかの直接的な懸念が生じるが、われわれは生きていく上でこのようなトレンドを避けるわけにはいかないのである」とEigler氏は述べ、ペースメーカー、人工内耳、さらにはBluetooth対応骨伝導ヘッドセットを例に挙げた。「テクノロジを賢く使用するのはわれわれ個人の責任なのである。課題が生じるのは、われわれが社会として、どのような技術を非合法とし、またはどの技術をそのまま維持するかを決断するときである」(Eigler氏)
Eigler氏はまた、2050年までには今日の最先端のコンピュータと比べて10万倍もの演算能力を持つノートPCが出現しているだろうと述べた。
「そのようなノートPCで何をするのか」とEigler氏は聴衆に尋ね、そして自分の投げかけた問いに自分で答えた。「われわれはコンピュータの新しい使用方法を見つけるだろう。ただし、それがどのようなものか、現時点ではわたしには思いつかない」(Eigler氏)
Ajay Royyuru氏はIBMのThomas J. Watson Research CenterにあるComputational Biology Centerの責任者であり、バイオインフォマティクス、機能的ゲノム学、システム生物学といったテーマを研究している。Royyuru氏は、2050年までに誰もが自分の遺伝子情報を持つようになるだろうと予測した。
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