本体ケースで連続ホームランを放っているAntecは、以前から電源ユニットのラインアップ充実にも力を入れている。言うなれば本体ケースと電源ユニットはコンビ商品、本体ケースが売れるなら、電源ユニットもと思うのは、自然な流れなのかも知れない。
だが、Antecの製品となれば、ユーザーの目も厳しくなって来る。ユーザーは「あれだけいい本体ケースをリリースしているメーカーなのだから、電源ユニットだっていいはずだ」と考えるからだ。Antecからはすでに大出力からローエンドまで、さまざまなモデルがリリースされている。そして市場の好意的な反応を見る限り、ユーザーの期待は裏切られていないようだ。
さて、そんなAntecの電源ユニットで、EarthWattsシリーズは「環境に優しい」とアナウンスされている。地球環境の保護意識が高まりつつある今、これは大いに注目すべき点だろう。では、具体的にどういった点が環境に優しいのか? そんな問いにAntecは、「最大25%まで電力消費を削減できる」という答えを用意している。電力消費の削減は、それだけで温室効果ガスの削減となり、すなわち環境に優しいという図式が成立する。
さらにEarthWattsシリーズは、電源効率の基準である80PLUSの認証を取得し、有害物質の使用を制限したRoHS指令に適合している。要するにEarthWattsシリーズは省エネと、有害物質の制限などで「環境に優しい」というのである。確かにそれらは素晴らしいことだが、EarthWattsシリーズが「商品」であるからには、ユーザーの購買意欲をかき立てる魅力が必要となる。
もちろんこれは、EarthWattsシリーズへ新たに加わった出力650Wの新製品、「EA-650」に関しても言えることなのだが。
従来、EarthWattsシリーズには出力380W、430W、そして500Wがラインアップされていた。そこに新たに加わったのがEA-650、出力650Wということである。このEA-650、対応規格としてはATX12V ver2.2とEPS12V ver2.9に準拠しており、一般的な自作PCからサーバ、ワークステーションまで幅広く活用できるようになっている。
ではその外観や機能はというと、同社の本体ケースのように、ユニークで目立った部分は皆無である。空調に関しては底面(一般的な取り付けを行った場合)に、12cm角の静音電動ファン1基が用意されている。電源コネクタケーブルは固定式で、分離脱着は出来ないタイプだ。
最近、ケーブル分離式、すなわちモジュラー式の電源ユニットが普及している。Antecからもモジュラー式の電源ユニットはリリースされているのだが、どうしてもケーブル固定式と比較してコストアップしたり、ケースサイズが大きくなりがちだ(どちらもかなり改善しているが)。また、コネクタ部分で発生する可能性がある、ノイズを嫌うユーザーがいるのも事実である。
なお、サイズは幅150ミリ、奥行き152ミリ、高さ86ミリと標準サイズなので、Antec製品はもちろん本体ケースを選ばず搭載できるだろう。重量は2.5キログラムとなっていて、こちらも極めて標準的と言える。
ケースの色も一般的なシルバーだし、メインの電源スイッチが用意されているぐらいで、目立った機能が搭載されている訳でもない。出力650Wというのは、パワフルなPCに慣れた自作ユーザーから見ると標準的としか言いようが無いだろう。だが、標準的な電源ユニットであるEA-650は、誰でも安心してリーズナブルに導入できる、基本がしっかりした電源ユニットなのである。
まず注目して欲しい「基本」は、冒頭でも紹介している通り、環境に優しいということだ。80PLUS、RoHS指令適合といった点もそうだが、Antecでは一般的な同クラスの電源ユニットと比較して、EA-650なら最大で33%の省エネが可能としている。省エネは地球環境の保護に貢献するだけでなく、長く使えば使うほど、私たちの財布の保護にも貢献することを忘れてはならない。
また、省エネで電源効率がいいということは、発生する熱量の比率が小さいということも意味する。熱量が小さければ、EA-650のように温度を感知して電動ファンの回転数が自動コントロールされる電源ユニットの場合、静音化が図られるということになる。電源ユニットに限らず、PCにとって省エネはいいことずくめなのだ。
しかし、省エネ機能に優れているという点だけで、自作ユーザーが電源ユニットを選ぶとは思わない。機能に関しても「基本」がしっかりしていなくては、EA-650が選ばれる電源ユニットになることは無いだろう。
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