英大学の研究者、「Xbox 360」を心臓病研究に利用へ

文:Elizabeth Armstrong Moore(Special to CNET News) 翻訳校正:編集部2009年09月29日 12時51分

 ウォーリック大学の研究者であるSimon Scarle氏は、心臓において電気的刺激が損傷した細胞の周りをいかに進むかをモデル化して、心臓の不整脈に対する理解を深め、さらには予測できるようにしたいと考えていた。

 この種の並列処理を行う場合、研究者は通常、複数のPCで構成される専用のクラスタシステムやネットワークの使用時間を、高い料金を払って予約しなければならない。ウォーリック大学のチームは、「Xbox 360」のGPUが、それよりも遙かに短時間かつ低コストで、同じ作業を実行できることに発見した。その上、Xbox 360は入手が簡単で、休憩時間に「Halo 3」を楽しめるという副次的な利点もある。

 驚くべきことではないが、Scarle氏は、かつてウォリックシャー州に拠点を置く企業Rare(Microsoft Games Studiosの一部)で、ソフトウェアエンジニアとして働いていた。Scarle氏によると、同氏は、心臓の形をしたアリーナ内でプレーヤーが敵を銃撃する「小規模なシューティングゲーム」をMicrosoftのために開発しているとき、初めてこのプロジェクトを思いついたという。

 これは、家庭用ハードウェアを使って、心臓のシミュレーションというハイエンドの並列コンピューティングを実行する非常に効果的な方法だ。過去のすべてのコードフレームワークを大幅に修正する必要があるが、Xbox 360は開発がとても簡単なプラットフォームだ。そして、コンピューティングの能力や速度の向上という利点、さらにはシステムの視覚化が比較的容易なことは、修正に必要なコストを補って余りある。

 世界最速のスーパーコンピュータ「Roadrunner」は、ソニーの「PlayStation 3」と同じプロセッサ技術を使っていることが分かっている。そして、Scarle氏は複数のXboxをつなぐことが可能だと話しているが、それはまだ実現されていない。「それは実現可能だ。しかし、そのためには、標準的な方法ではなく、『Xbox Live』のようなものを通して、インターネットを越える必要がある」とScarle氏はBBCに述べている。

 また、Scarle氏は、folding@homeについても述べている。folding@homeは、スタンフォード大学を中心とするプロジェクトで、何千台ものPC、Mac、Linuxシステム、PlayStation 3で余っている処理能力を、「タンパク質の折り畳みと異常折り畳み、そして関連する疾患」を理解するために利用する。そのネットワークは、5ペタフロップス以上の処理能力(毎秒5000兆以上の計算に相当)を持っている(Roadrunnerは1ペタフロップス以上で作動可能)。

 Scarle氏が発見したのは、良いことばかりではない。同氏の研究結果によると、不整脈を実際に予測するのは不可能で、これは、心臓細胞モデルが停止問題と呼ばれるコンピュータシステムにおける限界の影響を受けるためだという。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。 原文へ

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