「iPod」のようなポータブル音楽プレーヤーに健康に関する警告を表示し、聴力への長期的な悪影響の可能性をユーザーが理解できるようにすることは、実はそれほど突飛なことではないのかもしれない。
英国のThe Timesによれば、欧州委員会(EC)は現在、そうした提案を検討しているという。筆者が信号で停車中に音楽を大音量で鳴らしているティーンエイジャーだった遠い昔なら、音量を下げさせようとする政府を小馬鹿にしていたかもしれない。しかし、その頃よりも年をとり、妻に対して、「何だって。もう少し大きい声で話してくれ。何を言っているか聞こえないよ」と答えることが多くなった今では、大音量で音楽を聴くのはあまり賢明なことではなかったのかもしれない、と理解できるようになった。
筆者がECを支持できるのはここまでだ。ECは、ラベルや画面上に表示される警告文、長時間使用した後に定期的に注意を促すリマインダといった、ユーザーに警告を与えるいくつかの革新的なアイデアを検討している。もちろん、ECはデバイスの音量に上限を設ける方法も考えているが、どうしても大音量で聴きたいと言い張るユーザーのために、音量制限を無効にするオプションが必要なことも理解している。
それでも、わたしたちは次のような疑問を呈する必要がある。これは、本当に必要なことなのだろうか。警告ラベルや、その他諸々の対策は本当に必要なのか。The Timesの記事には次のように書かれている。
この提案は、欧州連合(EU)の科学委員会が2008年に発表した調査結果を受けて出されたものだ。同調査結果によると、ポータブル音楽プレーヤーのユーザーの5〜8%はヘッドフォンを通して、89デシベル(1日につき1時間までなら安全と見なされている音量)、またはそれ以上の音量であまりにも多くの音楽を聴いているため、永続的な聴力障害を招くリスクを冒しているという。同委員会は、20年後にはEU内で最大1000万が聴力障害を患っている可能性があると示唆し、これを受けた英国王立全国聴覚障害者協会(RNID)は対策の実施を求めた。当局者によれば、ポータブル音楽プレーヤーの最大音量は80〜115デシベルで、音を耳に直接伝えるイヤホンは、この音量にさらに7〜9デシベルを上昇させることがあるという。
当局者は、さらに別の調査結果も提示した。この調査結果によると、音楽が再生される音量は、筆者がカセットテープ式の「Walkman」を使っていた時代よりも、今日の方が大きくなっているという。Walkmanの時代は、音量を上げすぎるとディストーション(音のひずみ)が発生し、楽曲を高音質で楽しむことができなかった。今日のデジタル時代では、ディストーションはそれほど大きな問題ではなくなっている。
とはいうものの、筆者は自分の子供たちに「おい、音量を下げないと、プレーヤーを没収するぞ」と言う方が、ケースやアクセサリーで覆われてしまう可能性が高い警告ラベルよりも効果的だと感じている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。 原文へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」