東京大学大学院情報理工学系研究科の篠田裕之准教授と、同准教授の研究成果の事業化を目指す東大発ベンチャーのセルクロス(東京都文京区)は、薄いシートを使って電力と信号を同時に送り、スピーカーや電灯を作動できる新技術を開発した。電力と信号の両方を送れる技術としては電力線通信(PLC)があるが、ケーブル線上の1次元に限られる。新技術では、スピーカーなどの配置の自由度がシート上の2次元に高まるという利点を生かし、新たな用途を開拓していく。
電波は波長よりも小さい金属メッシュを通過できない。電子レンジのガラス窓も金属メッシュを張ることで庫内に電波(電磁波)を閉じこめている。
開発したシートは、片側が金属フィルム、もう一方が金属メッシュで、間に発泡ウレタンが挟まれている。無線通信装置をメッシュに接続して電波が中に注がれるように置くことで、電波はこの狭い発泡ウレタンの2次元空間に閉じこめられる。メッシュに接した装置間で通信が可能なほか、取得した電波信号から得られる電圧差で電流が作られ、スピーカーや電灯、卓上扇風機などを作動できる。
例えば、シートを壁紙として使い、多数の環境センサーを壁に張り付ければ「部屋の隅々まで考慮した最適なエアコンコントロールが可能になる」(同社)という。時計、発光ダイオード(LED)を使ったイルミネーション、スピーカーなどの位置を気分に合わせて自由に変えることもできる。
載せるだけで小型の情報端末や音楽端末などの情報更新と充電ができるタップなど、電力と情報を同時に供給できる新用途での実用化を目指す。
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