「ラグナロクオンライン」や「エミル・クロニクル・オンライン」などのオンラインゲームを運営するガンホーは、ゲーム中に広告を出稿するサービス、いわゆるアドバゲーミングを来年にも開始する。11月29日にはクライアント向けセミナーを開催し、その詳細を説明した。
ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長の森下一喜氏は「オンラインゲームはユーザーの滞在時間が極めて長く、広告価値が高い。オンラインゲームのメディアとしての価値創造を進めたい」と広告事業に乗り出す背景を説明する。ガンホーはユーザーへの課金とゲーム内広告の2本の柱で収益を強化する狙い。広告事業のために、10月にオプトやアドバゲーミングと提携をおこなっている。
オンラインゲームの中でもMMORPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game)では数百人から数万人が同時にログインし、それぞれが役割を分担してプレイする仮想社会を形成している。現在、ガンホーが運営するラグナロクオンラインは登録会員数が160万人を超える人気ゲーム。ユーザーは月額1500円の料金を払って利用しており、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)やブログなどといった他のインターネットサービスと比べてロイヤリティの高い顧客だという。
ガンホーと業務提携を行った、ゲーム専門の広告代理店であるアドバゲーミング 代表取締役社長の高橋弘氏はゲーム内に挿入される広告、「アドバゲーミング」の流れと現状について解説した。
高橋氏によるとアドバゲーミングは、長時間にわたってゲームをプレイするユーザーに対して印象に残る、強烈な効果を発揮できることが注目されているという。
また、今までのアドバゲーミングは、ゲームの開発時点でプログラム中に広告を盛り込む「ハードコーディング」という手法が中心であったが、この場合、一度挿入した広告を後から差し替えることができない。そこで、あらかじめ用意されている広告枠に対し、自由に広告を設定して配信する「ダイナミック広告」という手法が取り入れられるようになった。広告の差し替えが簡単に行え、利用者の属性などに応じた出稿が可能となるという。
また、ダイナミック広告にしても、当初は仮想の街に単純な「看板」が設置される場合が多かったが、最近ではゲーム内のさまざまなイベントと融合させ、ユーザーにより自然に強い印象を残すものが増えている。今後の課題としては「広告の効果測定をどうするか、明確な基準・手法を確立する必要がある」(高橋氏)という。
また、ガンホーとジー・モードの合弁会社でオンラインゲームサイト「ガンホーゲームズ」を運営するガンホー・モードのメディア・コミュニケーション事業部部長である加藤典子氏は同社がこれまでに実施したアドバゲーミングの実例を紹介した。
ガンホー・モードでは今までに宅配ドミノピザにラグナロクオンラインのチラシを同梱し、ゲーム中にはドミノピザの販売員が登場してピザを売るというキャンペーンを実施している。また、明治製菓とのコラボレーションでは明治アーモンドチョコレートのパッケージにキャンペーンコードを印字し、キャンペーンコードを入力することでゲームの1日体験チケットがもれなく入手できるほか、ゲーム内のアイテムを入手できるといった賞品を付けた。これによって全国のコンビニエンスストアで明治アーモンドチョコレートが売り切れるなど、大成功を収めたという。
最後に森下氏は「いくらロイヤリティの高いユーザーであっても、一方的に広告を押しつけては拒否されてしまう。いかにユーザーにメリットや楽しさを与えることができるか、焦らず長期的に取り組んでいきたい」と、ユーザーを大切にしてアドバゲーミングを育てていきたいと締めくくった。
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