Microsoftの「Office」と「Windows」は、相変わらず同社に膨大な売上と利益をもたらしている。だが、同社のほかの消費者向け製品はよく名前が知られたものでも、ほんのわずかな利益しか生んでいない。
CNET News.comが入手したMicrosoftの社内文書によると、新しいPCと一緒にバンドル出荷される「Works」は、1本あたり約2ドルにしかならないという。また「Money」の標準版では利益さえ生んでおらず、「OneNote」に至ってはPCメーカーにバンドルしてもらうために大幅な値引きを余儀なくされているという。
さらに、Microsoftはこのような状況が好転しないとの予測も示している。
MSNのある社員は、CNET News.comが入手した社内向けの戦略レポートに、「消費者向けパッケージソフトウェアの小売市場は見通しが暗い。市場規模が縮小しつつあり、消費者が小売店でソフトウェアを購入しようという意志も以前より弱まっている」と記している。
Microsoftはこのレポートのなかで、Works、百科事典の「Encarta」、デジタル画像処理ソフト、Moneyなどを含むフルパッケージソフトウェアの売上高が、2004年度には世界全体でも7%低下しており、さらに2005年度も同様の傾向にあるとしている。
このぱっとしない予測内容に加え、他社による無償製品提供の可能性への懸念から、MicrosoftではWorksなど多くの消費者向けソフトウェアについて、無償の広告付きバージョンの投入を真剣に検討するようになっており、場合によってはその対象となる製品が増える可能性もある。
Worksは、消費者向けの「簡易版Office」といった位置付けの製品だが、平均的なユーザーがこのエントリーレベルの生産性ソフトウェアを約3年間利用すると考えれば、広告収入がそれほど多くなくても、広告主体のビジネスモデルへの移行が可能だと、Microsoftでは計算している。
「つまり、広告収入が年間67セントを越えれば、Worksを無償で配布しても利益を出せることになる」と、Microsoftの2人の研究員とMSNのある社員は、今年はじめに行われたブレインストーミングセッション「Thinkweek」用に同社会長のBill Gatesに出したレポートのなかで述べている。
消費者向けのビジネスがソフトウェア全体の支出の足を引っ張っている、と感じているのはMicrosoftだけではない。IDCも、世界全体での消費者向けソフトウェア製品の売上が、昨年の40億ドルから2009年には47億ドルに達する見込みだとしているが、その平均伸び率は3%をわずかに上回る程度だ。
対照的に、パッケージソフトウェアの全世界における売上ははるかに大きく、2004年には910億ドルだったものが、2009年には1200億ドルまで伸びるという。
IDCアナリストのAlbert Pangによると、消費者は大半の市販ソフトウェアには購入に値するだけの価値がないと考えているという。ExcelやWordのようなプログラムの場合、ほとんどの人間はほんの一握りの機能を使っているだけなので、大金をはたくつもりはない、と同氏は指摘した。
「市販ソフトウェアを正規の値段で買っているのは、専門的な職業に従事している人間だけだ」とPangはいう。「どんなものにせよ、市場を拡大させるには、もっと良い戦略を考えだす必要がある」(Pang)
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