アリゾナ州スコッツデール発--David Corrは、現在の液晶ディスプレイ技術における最大の問題が、黒と白の表現にあると考えている。
これはつまり、現在のモノクロ液晶ディスプレイでは、本物の黒と白を再現できないということだ。こうしたディスプレイでは、濃淡の異なるグレイの文字や画像が表示されるだけで、しかもこれらは特定の角度から見たときしか判別がつかない。アイルランドのダブリンを拠点とするNteraで最高技術責任者(CTO)を務めるCorrは、ほぼどの角度からでも文字を読めるような真っ白の背景をLCD上で再現する新しい技術で、この問題を解決したいと考えている。
Nteraは、当地で開催中のDemoカンファレンスでこの技術のデモを行った。このデモでは、標準的なモノクロディスプレイと、Nteraの開発したNanoChromics技術を使ったディスプレイを並べ、両方にiPodの画像を映し出した。両者の違いは驚くべきもので、Nteraの技術を使ったほうは一目で容易に判読できるため、バックライトも必要としない。
「これは人々が親しんでいるインクと紙のように見える」(Corr)
Nteraは、標準的な液晶ディスプレイに、電流を感知すると色を変える分子でできた薄いフィルムを加えることで、これほど判読性の高いモニターを実現している。
このディスプレイは標準的なものよりも読みやすいだけではない。標準的なディスプレイが一定の周期でスクリーン上のすべての情報を書き換えるのに対し、Nteraのディスプレイでは、ディスプレイ上の情報を書き換える必要がある時だけ状態を変化させる。このため、バックライトを必要としないという特徴とあわせ、Nteraのディスプレイは標準的な液晶ディスプレイよりも少ない消費電力で動作可能だ。
Nteraのディスプレイは、既存の液晶ディスプレイ工場でも生産でき、この点が多くの投資を必要とするOLEDのような他の次世代ディスプレイ技術と異なる。「LCD工場まで出向いて、そこにある装置を用いるだけ(でこれを製造できる)」とCorrは説明する。
何社かの機器メーカーが、すでにNteraディスプレイを用いた製品の開発に取り組んでいると、Corrはいう。最初の成果は、製品の価格情報をリアルタイムに表示するような小売店用のディスプレイなどになると見られている。
また将来は、デジタルカメラから、現在初期段階にある電子ブックリーダーまで、シンプルな文字や数字の表示を必要とする装置にも採用される可能性がある。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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