TDKの研究者らが、DVDのキズを過去の遺物とするハードコーティング技術を開発したが、これが現行DVDの10倍の容量を持つ次世代データストレージ・フォーマットの普及にも力を貸すことになるかもしれない。
CNET News.comが実施したテストでは、TDKのコーティング処理が施されたDVDは、ドライバーや油性ペンを使った執拗な攻撃にも耐え抜き、何事もなかったかのようにデータを再生してみせた。標準的なDVDが子供のいたずらなどで簡単に傷ついてしまうことを考えると、これはたいへんな偉業といえる。
カリフォルニア州バークレー在住で、以前に郵送DVDレンタルサービスのNetflix会員だったこともあるElizabeth Berryは、このキズのつかないコーティングの話を耳にして、「それはすごい。小さい男の子のいる家庭の必需品になるだろう。うちの3才の子ならDVDコレクションの半分くらいはダメにしてしまうところだ」と冗談交じりに感想を述べた。
すでに歴史上最も人気の高い技術の1つとなったDVDは、企業各社が耐久性向上やストレージ容量拡大に取り組むなか、さらにその重要性を高めつつある。
TDKは今年に入って、この記録型DVDディスクを発売した。このディスクは同社が特許申請中のポリマーでコーティングされている。また、このコーティング技術は次世代DVDフォーマット、Blu-ray Discを後押しする業界団体の支持も取りつけた。ディスクのキズつきやすさはBlu-ray Discが直面する大きな懸念の1つだ。
Hewlett-Packard(HP)は米国時間16日、2005年後半から自社のPCにBlu-ray Disc対応ドライブを搭載していくことを明らかにした。さらに、PC大手のDellもBlu-rayを支持している。
現在、TDKの新型ポリマーでコーティングされたDVD-Rディスクは、紫外線もカットする強力な保護機能をうたい文句に、1枚5ドル99セントで販売されている。標準的なDVD-Rの価格が平均1ドルということを考えれば、この値段はかなり割高だが、しかし製造量の増加にともなって価格も急激に下がると思われる。コーティング処理の施されていないDVD-Rディスクでさえ、3年前には1枚約6ドルで販売されていたのだ。
TDKのコーティング技術が、Blu-rayの長期的な競争力実現に関して、非常に重要な役割を果たす可能性がある。DVDが一般に4.7Gバイトしか記録できないのに対し、Blu-rayは二層ディスクに50Gバイトのデータを記録できる。同フォーマットは、「HD DVD」と呼ばれるライバル技術と競争を繰り広げている。HD DVDは、二層ディスクで30Gバイトと記録容量ではやや劣るものの、普通のDVD以上にキズつきやすいということはない。
Blu-rayとHD DVDはどちらも、現行のDVD技術で採用されている赤色レーザーの代わりに、青色レーザーを利用する。赤色レーザーよりも波長の短い青色レーザーは、高密度のデータを読み出せることから、ディスクの記憶容量を拡大することが可能になる。
HD DVDは現行のDVDと同じ深さにデータ層を持っているが、Blu-rayではそれよりも表面に近い位置にデータ層があるため、HD DVDより多くのデータを記録できるものの、キズや汚れには弱くなってしまう。Blu-rayの業界団体はこの点を考慮し追記式ディスクを音楽カセットのような保護カートリッジに収納することにした。
Blu-ray Discのパートナー各社は、Blu-rayが容量でHD DVDを上回る点と、同仕様が規定する将来を見据えたインタラクティブ機能を評価している。しかし、カートリッジの使用に対しては複数の潜在パートナーが二の足を踏んでいた。
HPのMaureen Weber(光記憶装置担当ゼネラルマネジャー)は、「われわれの掲げていた要件の1つが、カートリッジを使わないことだった。消費者はむき出しのディスクに慣れており、格好の悪いケースは好意的に受け取られないと思った」と述べている。
書き換え可能DVDフォーマットをめぐる戦いでは、HPとDellが重要な役割を担った。両社がDVD+RWフォーマットをサポートしたことで、これが最も有力な仕様になった。さらに、ドライブやディスクも、両社が自社製PCに搭載したことがきっかけでコストが低下した。このため、Blu-rayでも同じシナリオを予想する声が多く聞かれる。
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