「デジタル家電に関して強い技術力を持つ日本企業は、我々にとって非常に重要な存在だ」--Motorolaの半導体部門が独立してできたFreescale Semiconductor会長兼最高経営責任者(CEO)のミシェル・メイヤー氏が来日し、9月3日に都内で記者会見を行った。日本を重要な市場として位置付け、積極的に市場開拓を行っていく方針だという。
Freescaleが主に手がけるのは自動車、ネットワーク、無線端末向けの半導体。メイヤー氏によると、自動車市場の半導体サプライヤとしては世界第1位のシェアを持つという。またルータやデータカードなどネットワーク分野でもトップシェアを誇るといい、「全世界のインターネット通信のうち、70%はFreescaleのプロセッサを介している」(メイヤー氏)とのことだ。
日本の携帯端末メーカーにチップセットを売り込む
Freescale Semiconductor会長兼最高経営責任者のミシェル・メイヤー氏 |
メイヤー氏はMotorolaから分離したメリットとして、ほかの携帯端末メーカーに対してもより自由な販売活動ができるようになったことを挙げる。Freescaleは欧州で普及しているGSM/GPRS方式の半導体に強みを持っており、GSM/GPRS互換の端末開発に力を入れている日本の携帯端末メーカーにチップセットを売り込みたい考えだ。
「モトローラはNTTドコモと共同でFOMAとGSM/GPRS方式のデュアル端末を開発しているという実績がある。これはつまり、我々のチップセットを使えばGSM/GPRS方式対応のものをすぐに作れるということだ」(フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン代表取締役社長の高橋恒雄氏)
デジタル家電向けの半導体については、消費電力をきめ細かく制御できるSMARTMOSや、同社のPC向けプロセッサ「PowerPC」をベースにしたシステム・オン・チップ(SoC)の強化を行っていく方針だ。SMARTMOSはアナログ・デジタル・ディスクリートを混在できる半導体で、家電や自動車に採用されているという。今後はさらに高機能なMCU、メモリの高集積化を進めていくとしている。
Freescaleは7月にニューヨーク証券取引所に上場し、さらに融資募集によって合計20億ドルの資金を調達している。第2四半期の売上高は前年同期比31%増の14億6000万ドル、粗利率は38.4%という。Motorolaから独立した際には4900以上の特許を引き継いでいる。
メイヤー氏によると、Motorola時代から半導体部門は独立した経営を行っていたという。「半導体を市場価格でMotorolaに販売しており、Motorolaは半導体部門以外の企業からも半導体を調達していた。Motorolaの端末のうち内製半導体を利用していたものは40〜60%程度ではないか」(メイヤー氏)として、分社によって生じた経営課題などは特にないとの考えを示した。
MRAMとUWBチップセットも紹介
MRAMのウエハを示すフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン代表取締役社長の高橋恒雄氏 |
高橋氏は次世代の不揮発性メモリとして注目されているMRAM(Magnetic Random Access Memory)についても紹介。すでに4MビットのMRAMのアルファサンプルを一部の顧客に提供しており、11月にはエンジニアリングサンプルの出荷を開始する予定。2005年第1四半期に量産を開始し、第3四半期からは本格的な量産を行うという。
会場では同社のウルトラワイドバンド(UWB)用チップセット「XS110」を使ったデモも行われた。実際にUWBの無線実験を行うには実験免許の許可が必要なため、デモは有線を通じて行われた。通信速度は110Mbps。XS110は8月に米連邦通信委員会(FCC)から認定を受けており、すでにサンプル出荷を開始しているという。通信距離は10m程度と言われているが、実験では16m程度の距離でも動作確認ができたとのことだ。
2005年初頭には通信速度が220Mbpsのチップセットのサンプル出荷を開始する予定で、2005年後半には90nmプロセスを使った1Gbpsのチップセットもサンプル出荷したいとしている。
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