マイクロソフトは16日、マッキントッシュ版オフィスの最新バージョンとなるMicrosoft Office 2004 for Macの発売を開始した。発売を機に同社はアップルストア銀座店にて記念イベントを開催、マイクロソフト最高技術責任者の古川享氏がマッキントッシュに対する思いを語った。
マイクロソフトとアップルコンピュータはライバルとして見られがちだが、古川氏は「会社としても個人としてもアップルは身近な存在で、ライバルだと思ったことはない」という。マイクロソフトでは「早期からマッキントッシュの試作機を預かり、同マシン上でマイクロソフトが何を提供できるか可能性を探っていた」と古川氏。マイクロソフトは、アップルに次ぐ規模のマッキントッシュ専任開発チームを抱える企業としても知られている。
Office for Macのロゴ入りシャツで登場したマイクロソフトの古川享氏 |
古川氏自身も、個人的に古くからのMacユーザーであったことを明かす。同氏は、「マッキントッシュの販売開始の初日にマシンをサンフランシスコで購入し、空港から抱えて持って帰ってきた」というほどだ。「日本の個人ユーザーとして初期5人の中に入るだろう」という古川氏のマシンは、いまでもマイクロソフトの笹塚オフィスにあるという。
実は古川氏は、マイクロソフト日本法人設立と同時期の1986年、アップルの社長にならないかと持ちかけられたことがあるという。その際同氏はアップルに対し、「クリーム色のMacをアップルから出し、銀色のMacをソニーから出したいという夢がある。これを実現したい」と提案したという。しかしその提案は却下され、同氏はマイクロソフトの社長に就任する。
それでも古川氏のマッキントッシュに対する思いは熱い。1998年、アップルのiMac販売開始の発表会で古川氏は、ネクタイとシャツを脱ぎ捨て、下に着ていたMacOS模様とOffice98模様がジグソーパズルで組み合わさったTシャツを見せるという派手なパフォーマンスも行った。「マイクロソフトのアップルに対するコミットメントを証明したかっただけなのだが、あまりにも目立ったため、あの時以来同社の発表会には呼んでもらえなくなった」と古川氏は笑う。
Office 2004 for Macも、マイクロソフトがいかにマッキントッシュ製品に注力しているかを証明するものとなっている。メモを取る際に音声を同時に録音し、音声連動メモが取れる機能や、パワーポイントで半透明のグラフが作成できる機能など、Windows版Office製品にはまだ実装されていない「必殺技」も用意されており、「マッキントッシュ開発チームでは、常にWindowsチームがまねしたいと思えるものを開発しようと努力している」と古川氏はいう。
古川氏は、秋葉原で見知らぬMacユーザーからいきなり「おまえなんか嫌いだ」と罵声を浴びせられたこともあるというが、自らもMacユーザーかつMacファンであることを強調する。また同氏は、「これからユビキタス社会が語られることが多くなるが、その際に異なったデバイスが異なった環境下で接続されることは普通になる。今後もアップルとは“共働”と“共生”の関係を保って一緒にこの世界を築いていきたい」と述べた。
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