米Adobeをはじめとする画像処理用プログラムの開発元は、数カ国の中央銀行が加盟する無名の団体の要請に応えて、紙幣偽造防止用の秘密の技術を自社製品のなかに追加したことを認めた。
Photoshopやその他のプログラムでは、今後数カ国の紙幣の画像を含んだファイルを開けなくなると、Adobeのプロダクトマネジメント担当ディレクター、Kevin Connorは述べている。紙幣の画像を検出するためのコードは、「中央銀行貨幣偽造防止グループ」(Central Bank Counterfeit Deterrence Group:CBCDG)という、あまり馴染みのない団体が提供したものだが、同団体へ加盟しているのはベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、スエーデン、スイス、イギリス、米国の各中央銀行だ。
この団体からの要請を受けて、Adobeや他のソフトウェアメーカーは、紙幣画像検出機能を、各々の製品のなかに追加した。
Connorは、今回追加した機能で、どの国の紙幣が保護されるのかはわからないと言っているが、AdobeのPhotoshop CSやJascの Paintshop Proのユーザーからは、米国の新20ドル札や数種類のEuro紙幣の画像を含むファイルが開けないとの苦情の声も上がっている。さらに Connorは、多くのカラープリンタにはすでにこの技術が追加されている点を強調した。
この技術を開発した米Digimarcは、CBCDGから契約を受注し、同技術用のコードを書いたことを認めたが、ただし詳細については何も言わなかった。
CBCDGに関する情報はほとんど出回っていない。
同団体は、G10諸国の中央銀行が1993年に結成したと、Bank of Canadaの年次報告書には書かれている。もともとSSG-2と呼ばれていたこの団体は、主としてコンピュータを使った貨幣偽造抑止用システムの開発を受け持ってきている。米連邦準備銀行の報告書によると、米国は2003年度にこのシステム開発プログラムに290万ドルを拠出しているという。国際決済銀行(Bank for International Settlements:BIS)はこの団体の代理人役を務めて契約関連の業務を担当しているとの情報が、BISのウェブサイトにある。
CBCDGは、早ければ2000年から、画像処理プログラムやカラープリンタを開発する企業にアプローチを開始し、各々の製品に偽造防止用技術を盛り込むよう依頼してきている。さらに、欧州中央銀行はEC委員会に対して、こうした技術の採用を義務づける法律を定めるよう要請したこともある。
米国では、このような技術は、法律の要求範囲を超えている。米国のアーティストは紙幣をスキャンして自らの作品に使うことができる。この際の条件は、使用した画像の大きさが、コピーに使った本物の紙幣の75%以下もしくは150%以上になっているというものだ。また、画像の片面のみを利用し、作品製作後にはデジタルコピーを廃棄することも求められている。
「ユーザーが取り込んだ画像を何の目的に使うかは考慮に入れていない」とAdobeのConnorは述べている。
現時点では、紙幣の画像を利用したいと思うユーザーは、U.S. Bureau of Printing and Engravingのような各国の合法的な取得先から、そうした画像をダウンロードしなくてはならない。
ただし、Adobeのユーザーフォーラムに掲示されているあるメッセージには、中央銀行が正規に提供している紙幣の画像でさえ開くことができないと書かれている。数種類のスエーデン紙幣を使ったコラージュの画像ファイルも開けなかったという。
「これはひどい。どんな種類の画像ファイルを開こうと、他人には関係ない。誰かから、そして自分がお金を払って手に入れたソフトウェアから、そんなことについて指図を受けたくはない」と、このメッセージを書き込んだ人物は述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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