10月29日、パシフィコ横浜においてディスプレイ関連の展示会「FPD International 2003」が開催された。基調講演ではメーカー各社のトップが講演し、それぞれの戦略が紹介された。会場には海外からも多くの聴衆が訪れ、日英中の3カ国語で通訳が行われるなど、世界的な関心の高さをうかがわせた。
松下電器産業 パナソニックAVCネットワークス社 副社長 兼 松下プラズマディスプレイ社長の森田研氏は同社が手がけるプラズマディスプレイ(PDP)の市場動向と同社の取り組みについて紹介した。松下電器はPDPを「V商品」と呼ぶ主力商品の1つと位置付けており、大きく力を入れている。
現在、薄型ディスプレイ市場では急激な成長を見せている。森田氏によると、「PDPや液晶ディスプレイ(LCD)市場は我々が予測した通りの勢いで伸びており、助走期間なしに急激な立ち上がりを見せた」とのことだ。2002年の国内テレビ市場を見ると、920万台の市場規模のうち薄型テレビは台数ベースで10%、金額ベースでは39%を占めたという。さらに2006年には市場規模が970万台となり、薄型テレビは台数ベースで65%、金額ベースでは82%を占めるようになると森田氏は予測する。
PDPだけを取り上げてみると、2002年の国内テレビ市場のうち、台数ベースでは3%、金額ベースでは23%を占めている。金額ベースでのシェアが高いのは、PDPの単価が他のテレビに比べて高いためだ。これが2006年には台数ベースで13%、金額ベースでは41%になると松下電器では見ている。
PDPの需要は世界中で拡大する見込みで、世界同時に前年比165%以上の伸び率で市場が成長すると森田氏は予測する。ただし普及に伴って販売価格は年率15〜20%程度で下がっていくのではないかとした。
2005年には年間150万台を量産できる体制に
松下電器産業 パナソニックAVCネットワークス社 副社長 兼 松下プラズマディスプレイ社長の森田研氏 | |
松下電器ではこの需要の拡大に合わせ、量産体制を整えていく方針だ。現在松下電器ではPDPの生産工場として、東レと合弁で設立した松下プラズマディスプレイの大阪茨木第1工場と、中国の上海松下プラズマディスプレイの工場を持っており、月産4万5000台ほどの生産能力がある。これに加え、2004年には大阪茨木に第2工場を稼働させる予定だ。茨木第2工場は月産8万台の能力を持つという。「2004年には年間100万台、2005年には年間150万台を生産できる体制にしていく」(森田氏)
2002年度における松下電器のPDP販売台数は約20万台だったが、2003年度は42〜45万台になるだろうと森田氏は予測する。さらに2004年度には約100万台になる見込みという。「2002年にはワールドカップがあり、2003年末には地上波デジタルが始まる。2004年にはアテネオリンピックもあり、大きくビジネスを展開していきたい」(森田氏)とした。
LCDとPDPの差は原価の問題になる
森田氏はLCDとPDPの棲み分けについても触れた。松下電器では37インチ以上の大型テレビはPDPで、32インチ以下はLCDを採用していく方針だ。「PDPもLCDも発展期にあり、それぞれの良さや悪さがそのまま出てしまっている。しかし今後改良が進めば、テレビとしてそれほど変わらないものになるのではないか」(森田氏)とした上で、「(両者の違いは)最終的には原価の問題になるだろう」と話す。LCDは原価におけるカラーフィルターや偏光板の割合が高く、「37インチ以上の大型ディスプレイではPDPのほうが安く作れる」(森田氏)とした。
PDPは消費電力や寿命、価格などの点でブラウン管テレビ(CRT)に比べて劣ると言われているが、発光効率を高めたり、生産効率を上げることでこの問題を解決するとしている。「ここ1、2年でPDPの性能はCRTに確実に追いつくだろう」(森田氏)と自信を見せた。
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