ヤフーと技術評論社は11月2日、今後のウェブの未来像を探る開発者向けイベント「ブラウザカンファレンス2010」を開催した。
「HTML5時代におけるYahoo! JAPANの考え方」と題したオープニングセッションでは、ヤフーの是井真氏が、同社としてHTML5の波をどうとらえ、取り組んでいるかを説明した。
是井氏はまず、「ヤフーでは、“ライフ・エンジン”の実現を目指し、すべての利用者に役立つサービスの提供と、幅広いデバイスへの対応、プラットフォーム作りなどを行っている」と、同社の基本姿勢をあらためて述べた。幅広いサービス提供の規模を具体的に示すものとして「130のサービス提供、月間496億PV、ユニークブラウザ2億2000万」との数値を挙げた。
基本姿勢に基づくサービスを提供するために、UI、コード、セキュリティ、プログラム、サーバなどに関して、基準や規定を設けており、ガイドラインをクリアしないとサービス提供はできないという。是井氏によれば、「UIガイドラインにサポートブラウザに関しての定義が設けられている。現状では、PCブラウザのみで10種類のブラウザ、バージョンをサポートし、モバイルやテレビにおいても、サポート範囲を定義し最適化をしている。900余りの端末をサポートしグループ別に最適化している」とのこと。
また、「現在のサポート環境では、日本国内の利用者のほぼ全員をカバーしている」との説明もあった。UIガイドラインでは、UIの理念やページレイアウト、表現容量なども定義されているという。
「HTML5と関連APIに関しては、その可能性と最適性に注目して取り組んでいる」と是井氏は語る。その理由として、「ブラウザへの属性実装による開発コストの低減化」「共通仕様化によるコード標準化」「サービス品質の向上」「各デバイス対応のスピードと品質向上」などを挙げた。
さらに、「ある程度、自由度がある言語だと見ている。プラットフォームに依存し過ぎない開発が可能になり、また、標準化が進むことでイノベーションへの取り組みが推進できるのではないか。要求仕様を実現するための技術選択の幅も広がると思う」とその可能性について語った。
一方で、「理想と現実のギャップが悩み。ユーザー層の広さと新しいことへの挑戦のバランスを保ちつつ、模索しながら取り組んでいる」との本音も語られた。ヤフーでは、「CanvasやVideoなどリッチUIの実現に注目して取り組んでいるが、すべてのユーザーに効果のある属性から進めている」、「まずはスマートフォンを中心に推進し、PCブラウザは様子を見ながら」といった姿勢で取り組んでいるのが現状だという。
是井氏は「スマートフォンブラウザに関しては、HTML5と関連技術への準拠水準が高く、利用者の環境としても限定した範囲での開発が可能なため、より先進的な技術を利用者に提供できる。PCブラウザへのHTML5実装に向けた準備にもなる。PCブラウザに関しては、各ブラウザの仕様に差異があるため、現時点では開発、運用コストが大きい」と説明する。「仕様の標準化に関しては、デベロッパーと協力しながら実現していきたいと考えているが、ブラウザ各社にも標準化への取り組みをお願いしたい」と話した。
すでにヤフーでは、HTML5やCSS3、JavaScriptを使用した「スマートフォン用共通テンプレートシステム」を用意し、トピックス、ニュース、ファイナンス、スポーツ、天気といった各サービスに実装し、iPhoneやAndroidに最適化して10月より順次リリースしているという。
「特にファイナンスでは、ポートフォリオのCanvasを用い、グラフィカルなチャートをTouch UIでコントロールできるので、ぜひ触ってみて下さい」と是井氏。そのほかにも、スマートフォン向けにHTML5の実装が進んでいる具体例を挙げていたので以下に紹介しておこう。
今後に関しては、実装可能な範囲から順次、HTML5関連APIの実装を積極的に進め、ラボでの公開やサービスへの実装も行っていく予定だという。また、ヤフーはHTML5を実装開発、可能な状況を推進するため、社内にワーキンググループを作り、ガイドラインやナレッジベースの作成を進める一方で、米Yahooとも協働し技術的アプローチも行っているとのことだ。
是井氏は、「ブラウザ各社やデベロッパーの方々とは、時に競い合う関係でもあるが、インターネットの可能性を信じて、未来のために、一緒にもの作りをしていくといった姿勢で、コミュニケーションを図りながら取り組んでいきたい」と締めくくった。
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