サンフランシスコ発--米国時間6月7日、Appleの最高経営責任者(CEO)Steve Jobs氏が、デモの神様に見放される一幕があった。
同日午前の基調講演が始まって40分ほど経過したころ、Jobs氏がAppleの最新端末「iPhone 4」を紹介していると、突如デモンストレーションが中断した。Jobs氏はウェブサイトのテキストを表示して、iPhone 4の新しい「Retina」ディスプレイと「iPhone 3GS」との違いを示そうとしていたのだが、会場となったMoscone Center WestのWi-Fi環境がその邪魔をした。一方のブラウザウィンドウしかウェブサイトを表示せず、もう一方は、上部に青色のプログレスバーが半分ほど進んだ状態で表示される以外はブランクとなった。
Jobs氏は数秒間、黙って端末をいじっていた。「なんてことだ。どうやら今日は皆さんにそれほど多くをお見せできないようです」。Jobs氏は渋々とこう述べ、「写真ならいくつかお見せできます」と言って次に進んだ。その後、再びブラウザのデモに戻ろうとしたが、やはりうまくいかなかった。
「申し訳ない。ちょっと私には原因が分かりません」と、Jobs氏は集まった開発者や報道関係者に向かって言った。「何かアドバイスはありますか」と同氏が問いかけると、客席後方から誰かが「Verizon!」と叫んだ。聴衆は笑ったが、Jobs氏はこれには反応せず、「ここではWi-Fiを使っているんですよ」とだけ言った。
Jobs氏の基調講演は、最初から最後まで完璧に計画されていることで知られるだけに、これはAppleにとって、そしてJobs氏にとって、めったにない失敗の瞬間だ。しかし幸いJobs氏は、デモが終わるまでに解決策を見出した。
およそ20分後、Jobs氏は、会場では570以上のWi-Fi接続が行われていて、それがデモの障害になっていることが分かったと述べた。
「そういうわけで皆さんには選択肢があります。ご自身のWi-Fi(機器)の電源を切るか、私がデモをあきらめるか。デモを見たいですか?」と、Jobs氏は聴衆に問いかけた。「それなら、今ここでブログを書いている皆さんは全員、ノートパソコンの電源を切る必要があります。さあ、パソコンを閉じてください。私は待っていますから」
メディア関係者の数人が実際にこの指示に従ったようである。
とはいえJobs氏は、それほど失敗を気に病む必要はない。2週間ほど前、同じくMoscone Center Westで開催された「Google I/O 2010」でも、同様のことが起こっている。この時はBluetooth信号との干渉が発生し、ステージで行われていたGoogleのデモが中断してしまったため、同社は参加者に対し、携帯電話の電源を切るよう要請しなければならなかった。
しかし、このような失敗は2度と繰り返さないのがAppleの常だ。Appleの自社イベントにおいて、無料の公共Wi-Fiネットワークを会場で利用できるのは、きっと今回が最後になるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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