日本IBMは6月1日、日本における「スマーター・コマース(Smarter Commerce)」への取り組みについて発表を行った。
スマーター・コマースは、3月に米IBMが発表したもので、「より賢い商取引」を実現するためのビジョンとなる。同社が提唱しているビジョンである「スマーター・プラネット(Smarter Planet)」の具体的な取り組みのひとつと位置づけられ、「小売、流通分野だけに留まらず、金融、製造といったあらゆる業種で展開されるもの。地球にやさしい商取引、企業および一般消費者に快適な商取引を実現するために、IBMが何を支援できるかを示したものになる。スマーター・コマースは、世界中で実績があるソフトウェアを活用しながら、戦略策定のコンサルティング、システム構築、運用・保守までのサービスを提供するものになる」(日本IBM、グローバル・ビジネス・サービス事業 アプリケーション開発事業担当執行役員の山口明夫氏)とした。
スマーター・コマースの実現に向け、IBMはここ数年で、スターリングコマース、Unica、Coremetricsを買収し、ソフトウェア製品群を拡充してきた。これらを統合、連携させるとともに、IBMがグローバルに展開してきた各業界向けの知見、サプライチェーンなどの豊富な経験を活用し、購買、マーケティング、販売、サービスといった商取引全体のバリューチェーンを強化する。実店舗、ウェブ、モバイル、コールセンターなど複数のチャネルにまたがった業務、顧客、在庫などを統合し、モノや人に関わるデジタル情報と実世界の融合を実現するとしている。
「スマーター・コマースにおいては、Eコマースは一部の機能としてとらえ、ビジネス全体のあり方、顧客に対するマーケティングのあり方をどう変えていくのかということを考える。組織、業務プロセス、ITの3つの領域に渡って最適化を図ることで、市場変化を感知し、それに応える変化対応力に優れたインテグレーションサービスを、より短期間に提供する」(日本IBM、グローバル・ビジネス・サービス事業デジタル・トランフォーメーション バリューネット事業部長の久保田和孝氏)という。
例えば、顧客一人一人の購買行動や嗜好を分析し、動的に商品を推薦。顧客データを最大限に活用して自動化されたマーケティングキャンペーンを実施するほか、複数チャネルから、注文と在庫管理および配送といったフルフィルメントの統合管理を行うこと、店舗や倉庫、工場などでモノや人の所在を自動認識してトレーサビリティを実現すること、スマートフォンなどの新たなデバイスやソーシャルメディアなどの新たなサービスを効果的に活用すること、現場が使いやすいインターフェースを用意することなどがスマーター・コマースのビジョンには含まれる。
製品としては、「購買」「マーケティング」「販売」「サービス」の4つの領域でソフトウェアを提供する。全世界で1500社以上が採用しているマーケティングマネジメントソリューションである「Unica」、オンラインマーケティングプラットフォームである「Coremetrics」、オーダー受注から在庫管理、納品、返品までのフルフィメントソリューションを提供する「Sterling Commerce」などが、それに含まれる。
また、各業界ごとに整備された事業可視化フレームワークの活用によって短期間での検討が可能なクイック診断プログラムを「スターターキット」として提供する。クイック診断プログラムを利用すると約5週間での検証が可能であり、価格は500万円からとなっている。また、「Express Sevice」として、Unicaを用いたキャンペーンマネジメントの効果検証サービスを、300万円から提供する。
日本IBM理事、ソフトウェア事業 インダストリー・ソリューション事業部長の田崎慎氏は「IBMは、このビジネス領域において、昨年だけで約25億ドルの投資を行っており、既に全世界で1000人体制での専門家を配置している。日本でも全社横断型の専任体制の確立に向けて準備をしている段階にある。また、研究会などを設置し、パートナーとともに新たなビジネスモデルの実装にも取り組むほか、パートナープログラムを7月に日本でも発表することになる。加えて9月には、サンディエゴで、ユーザー、パートナー、アナリストなどを対象にしたスマーター・コマースに関する専門イベントを開催する予定であり、コンセプトを提示するだけではなく、世界規模での知見を集めながらパートナーとともに展開を広げてきたい」とした。
なおIBMでは、スマーター・コマースの事業規模を、全世界で700億ドルと見込んでいる。
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