偽の株情報を送りつけるジャンクメールが驚くほど有効であることをドイツの研究者が明らかにした。
スパムメールで偽の株情報を流して買いを促す「Pump and Dump(違法な売り逃げ)」と呼ばれる詐欺行為が、売買高の増加や株価の人為的値上がりにつながっていると、ドレスデン工業大学の研究者らが先週明らかにした。
研究者らによると、株価は典型的なケースで約500%上昇するという。
この株取引には、スパムを送信するスパマー、事情を知らないトレーダー、事情通のトレーダーという3つのグループが関与する。スパマー自身は、事情を知らないトレーダーがスパムのアドバイスに従って株価を引き上げたところで、あらかじめ購入しておいた株式を素早く売却して利益を得る。研究者のRainer Böhme氏によると、3番目の「事情通のトレーダー」グループは、詐欺行為を認識しながら「機会に便乗」し、同じように素早く株を処分するという。
Böhme氏は、英国ケンブリッジで開催されたWorkshop on the Economics of Information Securityで講演し、「株価は短期トレンドに比例して上昇する」と述べ、「売り逃げは成功しているようだ。電子メールスパムのような信用できない情報源を材料にして投資判断が下されているのは明らかだ」と付け加えた。
研究では、数学モデル(多変数回帰)を用いて一連の統計データが分析されている。Richardson's Stock Spam Effectiveness Monitorのデータと、Yahoo Financeからダウンロードした影響を受ける株式の日足を比較することで、データは集められた。
Böhme氏と同僚のThorsten Holz氏は、スパマーが投機的低位株にほぼ的を絞って取引していることを発見した。スパマーがこれらを選ぶ理由は、「流動性の低い株式は個々の取引が市場に与える影響が特に強い」からのようだという。両氏の調査から、詐欺行為によって株価が平均500%急騰していること、そして、同手口の効果に弱まる気配が見られないことが判明している。
ウイルス対策会社Sophosの情報セキュリティ専門家らも、詐欺行為による株価急騰の形跡が見られ、違法な売り逃げがあったことを明らかにしている。
Sophosは、去る米国時間6月26日にSouthern Cosmeticsという化粧品会社の株式購入を勧めるスパムが送付されたことから、同社の株価が上昇したと説明する。
これらの電子メールは、スパム対策フィルタによる検知を回避する目的から内容が画像として埋め込まれていた。そして、同じ化粧品会社のNaomi LLCと提携交渉が進行中であるため、Southern Cosmetics株は購入しておくことが賢明である、と書かれていた。
Southern Cosmeticsは29日、自社が無関係であることを強調し、これらのスパムメールを無視するよう投資家に注意を呼びかけた。
スパムの大量発生中にSouthern Cosmeticの株価を調査したところ、同社株の取引は著しく増加し、スパム流出前の1株1セント未満の安値から、最大6.6セントにまで上昇した。
Sophosのシニア技術コンサルタントGraham Cluley氏は、「休眠状態の株で出来高が激増した」と語った。
Cluley氏は、「売り逃げはスパム業界で多く用いられる手法で、われわれが目にするスパムの15%を占めている」と語り、「スパマーは専門的な知識を付け、本物の会社報へもリンクを張ってくるようになるはずだ」と付け加えた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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