カリフォルニア州サンノゼ発--Microsoft会長のBill Gatesは何年も前から、コンピュータセキュリティの弱点としてパスワードに目を付けてきた。
だが、「Windows Vista」の登場を目前にしたいま、Gatesはコンピュータユーザーやネットユーザーの身元確認の手段として、パスワードに代わる強力な武器をついに手にしたと感じている。
今年中に出荷予定のVistaには、「InfoCard」という新しい認証の仕組みが導入される。InfoCardを使えば、ユーザーがインターネットで利用する多数のログイン名やパスワードを管理する方法が改善されるほか、これを第三者による認証プロセスに役立てることも可能だ。またVistaでは、スマートカードのように、パスワードよりも強力な手段を使ってPCにログインすることもさらに簡単になる。
Gatesは、当地で開催中のRSA Conference 2006で講演し、「われわれは、必要な基盤の準備を進めているところだ」と語った。
ただし、このような進展があっても、パスワードが一夜にしてなくなると考えるほど自分は世間知らずではないと、Gatesは語った。
「一晩でパスワードを捨てられるなどと触れ込むつもりはないが、企業システムでは3〜4年もあればこのような変化が起こりえるし、また起こるはずだ」(Gates)
Gatesが何としても必要だと語るパスワードの置き換えは、セキュリティの簡略化に向けたMicrosoftの取り組みの一環だ。「今のシステムは複雑になりすぎている」(Gates)。Vistaや、「Windows OneCare Live」や「Microsoft Client Protection」などMicrosoftからまもなく登場するセキュリティ製品は、一般ユーザーの負担を軽減するものになると同氏は述べた。
Microsoftによると、InfoCardとは、財布に複数のクレジットカードをいれるのと同じ感覚でさまざまな認証/支払情報を一元管理するための技術だという。
InfoCardは、Microsoftの認証技術に対する2回目の挑戦となる。同社が1999年に公開したシングルサインオンサービス「Passport」はほぼ失敗に終わっている。
Passportには、ユーザーの個人情報が本人や取引相手となる企業ではなくMicrosoftに管理される点などについて不満の声が多く上がっていた。MicrosoftはInfoCardで、これらの問題点を解決しようとしている。
Microsoftは過去にInfoCardの説明をしたことがあり、2005年には開発者向けにプログラムコードの初期バージョンを公開している。しかし、Microsoftが公の場でその動く姿を披露したのは、今回のGateの講演が初めとなる。
Microsoftはプレゼンテーションのなかで、ユーザーが自分で作成したInfoCardを使ってレンタカーサイトにログインし、別の会員用InfoCardを使ってレンタル料金に割引を適用してもらう様子をデモした。
Gatesはまた、Internet Explorer 7でInfoCardをサポートすることも発表した。Microsoftによると、同技術は「Windows XP」にも提供されるという。InfoCardは、Microoftが「Windows Vista」向けに開発を進める技術の1つだが、同社はこれをXPにも提供する。
Microsoftは、パスワードに代わる技術の導入はシステムレベルで行われる必要がある点を認めたが、同社はそのほかにインターネット上での認証システムを連携させる「Identity Metasystem」と呼ぶ技術の開発にも取り組んでいるとGatesは述べた。
ネット上での取り引きが増加するなか、Microsoftは身元確認を改善するもっと強力なデジタル証明--いわゆる「高信頼性証明書("high-assurance certificate")」の導入を求めている。
デジタル証明は、ウェブサイト上のトラフィックが暗号化されていること、そのサイトが第三者によって確認されていること、そしてその有効性が保証されていることを示すために、今日のウェブブラウザでもすでに幅広く利用されている。しかし近年、認証基準があまくなり、鍵アイコンに対する信頼性が低下していることを受けて、Microsoftなどの各社は、新しい証明書の導入を提唱するようになった。
Microsoftは米国時間14日、「Microsoft Certificate Lifecycle Manager」の初めてのベータ版を発表した。これはデジタル証明やスマートカードの提供/設定/管理を合理化するためのツールだと同社の説明している。
注目を浴びるスパイウェア対策
Gatesは、Windows Vistaに搭載されるほかの複数のセキュリティ機能も売り込んだ。Microsoftはこの日のデモのなかで、スパイウェア対策技術のほか、Internet Explorerを専用の「サンドボックス」で動作させる新しいモードも紹介した。このモードでは、インターネット用コードがPCのほかの部分に侵入することはない。
また、同社は14日、Windows AntiSpywareのセカンドベータを「Windows Defender」という名称で公開した。このスパイウェア対抗ツールの最初のテストバージョンは人気が高く、Microsoftのウェブサイトから2500万回以上ダウンロードされている。
Windows AntiSpywareは2005年1月に最初のベータ版が公開された。このプログラムはスパイウェアからPCを保護するために考えられたものだ。スパイウェアとは、コンピュータユーザーの活動を監視する目的でPCにひそかにインストールされるソフトウェアを指す。
Windows Vistaの最新プレビュー版には、すでにWindows Defenderという名前でこのスパイウェア対策ソフトが盛り込まれている。Microsoftによると、Windows DefenderはVistaの一部として出荷される予定だという。なお、昨年のRSAカンファレンスでは、GatesがMicrosoftはスパイウェア対策ソフトを無償で提供すると発表していた。
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この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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