産業技術総合研究所(産総研)は、動作周波数10MHzの光子検出装置を開発し、長さ10.5kmの光ファイバーを使った量子暗号通信による鍵配布実験で「世界最高速」(産総研)の鍵生成率45kビット/秒を達成した。産総研が5月12日に明らかにしたもの。この光子検出装置は産総研が開発した光子検出法を採用しており、10MHzという動作周波数は「1550nm帯で世界で最も速い」(産総研)。
量子暗号通信は、送受信者間で量子(光子)1個につき1ビットの情報を載せ、多数の光子を送ることで鍵配布を行う通信方式。通信経路の途中で盗聴された場合、そのことを検知できる特徴を備えており、「究極的な安全性を保障することができる」(産総研)。
光ファイバーによる通信でよく使われる1550nm帯の伝送損失は、100km伝送した場合20dBとなり、99%の光子は受信側に到着しない。そのため、鍵生成率は10ビット/秒前後と極めて低い値しか出せず、量子暗号通信の利用には不十分という。量子暗号通信を実用化するには、光ファイバーの伝送損失の改善と、短時間に多数の光子を伝送/検出する技術が必要とされる。
産総研の光子検出装置は、光子検出過程でなだれ電流増幅を必要としない画期的な光子検出法を用いた。その結果、「アフターパルスと呼ばれる雑音の発生を大幅に抑えることに成功し、動作周波数10MHzという世界最速の光子検出装置を実現できた」(産総研)。
今後、産総研は光ファイバー長を100km程度に延長するとともに、10MHz以上で動作する光子検出装置を開発し、長距離かつ高速な量子暗号通信の実現を目指すとしている。
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