ふつう「配管工事」のような話はあまり魅力的ではないけれど、この話は本当に素晴らしいものになる可能性があると思う。
米IBM、米Sun Microsystems、米BEA Systemsはそれぞれ、自社のサーバソフトがビジネスアプリケーション実装に際して選ばれるようにするするために、力を貸すよう開発者を口説いている。だが米Microsoftでは、再び競合するJava陣営を出し抜く計画に真剣に取り組んでいる。
今回同社が取り組んでいるのは、負荷の大きいWebサービスアプリケーションの開発を容易にするといわれているソフトウェアツールだ。この製品は、Microsoft製品と特に協調して機能するよう設計された、粘着力のあるミドルウェアレイヤーで、2年ほど前から開発が進められている(より詳しい情報は、10月に開催されるMicrosoftのProfessional Developersカンファレンスで明らかになる模様)。
次期WindowsのLonghornは、Java 2 Enterprise Edition(J2EE)陣営が提供するもの全てに勝るWebサービスのインフラと、密接に結びついたものとなる、というのが顧客への売り文句となるだろう。
この売り文句には聞き覚えがある、と思った読者は正しい。Microsoftは段階的に、Javaが行なっていることをほぼ全てを作り直しているのだ。数年前、同社は開発言語C#を発表したが、これはほとんどJavaのクローンだ。ただし、Windowsに結びついているという点は除いての話だが。実際、J2EEソフトウェアの機能は、C#に最も新しく追加された機能によって、Windows技術で置き換えられている。
私はMicrosoftを非難しているように聞こえるかもしれないが、同社が非常に複雑なタスクを簡単にしようとしていることは特筆に値するだろう。MicrosoftはWindowsオペレーティングシステム(規模の小さな企業数社を出し抜いた)とデータベース構築・管理(同社のSQL Serverは、米Oracleと激しく競合している)、ウェブサイト構築(Internet Information Servicesと、Active Server Pagesなどの関連ツールは、Netscape Serverをほぼ駆逐した)で、実際にこれをやった。また同社は、WordやExcel、Exchange Serverといった、より日常的なビジネスタスクにも、同様の努力を注いだ(Exchange Serverでは、電子メール/メッセージ/ワークグループといったコンセプトをLotus Notesから借用し拡張したが、このため企業はNotes専門の技術者を雇う必要がなくなった)。
Microsoftの計画では、例のごとくWindowsが戦略の中心となっている。しかしそれは無理もないことだ。独占状態から生じる利点をわざわざ無駄にする理由なんてあるだろうか。さては、Microsoftによる裏切り行為を示す新たな証拠だな、と思った読者もあるだろうが、実はそういうわけでもない。Microsoftは革新的な製品を数多く作り出しているのではないかもしれない。しかし同社の経営陣は、良いアイディアを見つけ出し、それに乗じて利益を得るということはできる。また、オリジナルのコンセプトの改良自体には、違法な点は全くない(Xerox PARCのAltoを改良したAppleのMacintoshコンピュータはどうだろうか?)。
そして同社は、米司法省を怒らせるような馬鹿な真似はもうしない。技術の「バンドル」の疑いがあると聞けば、とりわけ敏感になる政府のことをよくわきまえているMicrosoftは、ワシントンD.C.の法廷に戻って、政府の役人と反トラスト法の細かい内容を議論することなどに全く興味がない。
それに、まともな人間で、MicrosoftによるWebサービスの独占は避けられないと信じているような人を私は知らない。実際のところ、MicrosoftのWebサービス戦略「.Net」は、いまだに開発途中の代物だ。それにWebサービス市場では、(WindowsがOS/2を打ち負かした)オペレーティングシステム(OS)市場や、(同社がLotusやWordPerfect、Borlandに勝利した)オフィス向けビジネスアプリケーション市場とは異なり、デスクトップ市場での独占をあてにすれば成功が保証されるということはない。Microsoftは(依然発売が遅れている)Longhorn OSへのアップデートの必要性を企業のIT管理者に説いて回っているが、Steve Ballmerが「.Netは壮大なアイディアだ」と言ったというだけで、大企業がJ2EEベースのシステムを放り出すことはない。
なぜ、もっと多くのIT担当者が.Netを採用しないのか。それには多くの理由が考えられるが、Microsoft製ソフトウェアに見つかった一連の重大な欠陥が、彼らの心を捉える上でマイナスだったのは間違いない。Microsoftは、細かく区切られた、より安全なシステムではなく、高度に統合された一枚岩の製品群を開発することに固執している。このことが今後、IT管理者が2004年にWebサービスの方針を決定していく上で、問題となるだろうか。
多くの事柄が、開発ツール次第で決まることになるだろう。そして、Microsoftがこの点をさらに強調して売り込みをしていくのは間違いない。Webサービスアプリケーションの構築にMicrosoftのツールを利用する開発者が増えれば増えるほど、Longhornがついに発売となった時には、その売上が伸びるわけだ。
これが、Windowsを中心としたWebサービス戦略の美味しいところだ。それは違法じゃないかって?Microsoftが今のやり方から大きく逸脱しない限り、違法にはならない。SunのScott McNealyは今でもそのことに不平を述べているが、ただの独占状態にあることと、略奪者のような独占を行うこととの間には、無限の隔たりがあるのだ。
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