「ベストを尽くしなさい」――親は子供にいつもこう言う。学校でベストを尽くせ、仕事でベストを尽くせ、人生にベストを尽くせと。
1960年代、私が米国政府の高等研究計画局(ARPA:Advanced Research Projects Agency)でインターネットの構築に取り組んでいたときも、ベストを尽くすことが求められていた。ルータはトラフィックをできるだけ早く効率的に処理し、パケットを迅速に送るものだと決めつけられていた。ルータよ、そこで止まってどうする、迷っている時間なんてないじゃないか。パケットが渋滞しているだって? さっさと溜まっているパケットを次に流してしまうんだ!
残念なことに、ルータはその頃からあまり進化していない。インターネットでリアルタイム性が重要視されるようになった現在、ルータがベストを尽くしたところで十分とはみなされないようになってきている。その理由を説明しよう。
新たな革命がやってくる
まずは前後関係をはっきりさせるために、インターネットの歴史をおさらいしてみよう。インターネットははじめ、初期のInternet Message Processorで構築され、のちにルータが登場した。接続は専用モデムか専用線接続で、1対1でのコミュニケーションが可能だった。主なアプリケーションといえば、メール、ファイル転送、USENETのニュースグループ、掲示板、そしてWAISやArchieといった実験段階の情報共有プロトコルなどだ。これが時を経て現在のインターネットになり、ウェブブラウザに代表される最初の革命が起こったわけだ。ウェブブラウザはインターネットを一歩進んだものにしようという努力から生まれたもので、インターネットが元来の目的以上のことを果たせるようにしたものだ。
現在のインターネットは成功を収めているが、これまであまり変化のなかったルータというアーキテクチャをベースに構築されている。現在のルータは、10年前のものとそれほど変わってはいない。しかし、インターネットの機能やIPテクノロジーに対する期待は高まる一方だ。
私たちが今、新たなインターネット革命の初期に立っているという事実は、大変面白いことである。この革命でインターネットの質と可能性が向上し、インターネットはすべての通信媒体を包摂するものになると思われる。それは、現在のインターネットで「ベストエフォート」といわれるものを越えたレベルとなるものだ。このような高いレベルのインターネットに対する需要は、インターネット本来の目的を越えるものだが、新たな革命の原動力となっている。
ここでさらに面白いのは、この革命がインターネットの歴史上はじめて、日本をはじめとするアジア諸国やヨーロッパの革新の下で起こっているということだ。北米だけがインターネット業界の中心ではなくなったということである。
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