米Wangや米Data Generalといったミニコンメーカーがハードウェア産業界で圧倒的優勢を示していた1982年、米Sun Microsystemsは創設された。10年も経たずしてこのUnix集団は10億ドル超の売上げを記録する企業に成長し、それまで無敵だったミニコンメーカーは過去のものとして忘れ去られていった。
この現象は、Harvard Business Schoolの教授、Clayton Christensenが提唱する破壊的技術の影響と言えるだろう。IT技術の転換期、ミニコンユーザー企業に対し、ミニコンより安くよりオープンなシステムを提供することで勝者となったSunは、既存のメーカーにとって採算のあわない価格を提起したのだ。
それから20年近く経とうとしているが、今度はSunがその地位を保とうともがいている。Unixサーバ市場が次第に縮小するにつれ、Linux OSを採用したIntel製チップ搭載サーバの売上げが伸びており、2002年の第4四半期には前年と比べて倍増している。
念のために言っておくと、Sunの幹部はこの事態を重大な問題とは考えていない。
こういった時代の変化の中でSunはただ黙っているわけではなく、次の戦略を着々と立てている。32ビットのIntel製プロセッサを搭載すると明言する一方で、Solarisの処理速度を上げ、機能を追加するという意欲的な計画を持っている。また、NI initiativeという統合システムで管理を行うデータセンター向け製品も発表した。
Sunのソフトウェアグループ責任者であるJonathan Schwartzに「Linuxを脅威と感じているか?」と聞いたところ、彼は「いや、全く感じない。Intelに対してはどうかと聞かれれば、そうだね、少しは気になるかな」と述べた。
業務計画の見直しを迫られるSun
Sunのライバル会社は、Linux OSとIntel製チップを搭載したハードウェアを大量に販売し始めている。LinuxとIntelの組み合わせはSun製品の代わりとなり、低価格である上にオープンなシステムを構築しやすいことが売りだ。LinuxにはSolaris OSを超えられるほど技術的に目立つ機能を備えているわけではない。しかしLinuxは、オープンソースというコラボレーションによって生まれたもので、どの企業にも属さないという特徴を持っている。
一方SunはLinuxに対し、複雑なデータセンターを構築する際には有償プログラムが必要だというのに、それを隠した宣伝をするのは間違っていると主張している。Linuxベースのシステムを構築する際、その上に走るアプリケーションなどのソフトウェアにかかる費用はユーザー企業にとって無視できない存在だ。Sunの提供するSolaris OSなら、そういったソフトウェアが一パッケージにまとまっているとSunは強調する。
さらにSunは、米Red HatのLinuxと独SuSeや米Monte Vistaなどが提供するLinuxとの互換性に問題があることにも疑問を投げかけている。
Sunの言い分はよくわかるが、筆者の所感ではIntel-Linux機同士のシステム移植のほうがSolarisのそれよりもずっと簡単なのである。12月期におけるLinuxの四半期の売上が前年より急激に増加している事実からしても、データセンター管理会社が同じ意見を持っていることは明白だ。以下は、主要メーカーにおけるLinux関連の売上高である。
―― 米IBMにおけるLinux関連の売上は、前年より7560万ドル増の1億5990万ドルだった。
―― 米Hewlett-Packard(HP)では、前年の4430万ドルより81%増の8020万ドル。
―― 米Dell ComputerにおけるLinuxサーバ収益は、前年比66%増の7710万ドル。
―― 2002年からLinuxサーバの販売を開始したばかりのSunは、Linux関連の収益が1300万ドルにとどまっている。
企業のデータセンターに対する全出資額の中でこれらの数字はほんのわずかに過ぎないかもしれないが、Linux-Intelの組み合わせは、価格競争に勝てないSunを市場から着実に追い出している。
IBMにとって、Linuxのような無償OSは、天からのさずかりものだといえる。なぜなら、ソフトウェアやサービス部門からの収益で無償部分の補填をし、商品を一般化させるという戦略が行えるからである。同様にHPでも、プリンタービジネスの収益力で充分に損失を埋め合わせられる。(さらにHPはSunと違って、完全にLinux OSで動くハードウェアのラインアップも計画中だ。LinuxをSparcチップ上で動かしてみたい人がいるのなら、どうぞご自由に。)また、低価格層のシステム販売では圧倒的に優勢であるDellにかなう企業はない。
風前の灯火となった株価を回復させようと躍起になっているSunにとって、さらなる価格競争は致命的だ。
Linux-Intelシステムの価格が下がるにつれ、Sunのように高価なシステムを扱う企業へのプレッシャーはより大きくなる。RISCプロセッサ上で動作する特殊なUnix OSというシステムがなぜ高価なのか、ユーザーを説得することがますます困難となるからだ。各企業はハードウェアコストの削減に躍起になっているし、UnixプラットフォームからLinuxへ移行しても既存の知識やコードを十分に生かせることは周知の事実なのである。
これに対し、データセンターは現行システムを安易に捨てたりはしない、とSunは反論する。しかしこの言い分は、1980年代初頭にSunがミニコンメーカーを敗者として追いやってしまう直前に、彼らがこぞって叫んだセリフを彷彿させる。
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