WSJ日本版が正式にオープン--有料課金モデルで日本のメディアを刺激

別井貴志(編集部)2009年12月16日 05時00分

 ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン(WSJJ)は12月15日、「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」(WSJ日本版)を正式に開設した。

 WSJJは、2009年6月18日に資本金2億円、資本準備金2億円で設立され、Dow Jones& Companyが60%、SBIホールディングスが40%出資している。WSJ日本版は、「The Wall Street Journal」(WSJ)に毎日掲載される200本ほどの記事の中から30本程度を翻訳して掲載する。WSJの有料(年間購読料103ドル)購読者数は107万人で、月間平均UUは2152万、月間平均PVは2億2000万。

 WSJ日本版の記事の購読は無料と有料があり、有料の記事にはタイトルに鍵マークが付いている。料金は1カ月で1980円、6カ月で9960円、1年で1万6560円となっている。有料会員は金融情報週刊紙「BARRON'S」(週に10本程度)も読める。また、無料会員でも、記事タイトルと記事本文の一部を読んだ後、続きを読みたければ記事単位での購入も今後可能になる。なお、英語版のWSJの有料会員に対するWSJ日本版の割引などは現在予定してない。

WSJJの取締役であり、ダウ・ジョーンズ・コンシューマー・メディア・グループ最高執行責任者のTodd Larsen氏 WSJJの取締役であり、ダウ・ジョーンズ・コンシューマー・メディア・グループ最高執行責任者のTodd Larsen氏

 WSJJの取締役であるTodd Larsen氏は、「2002年に始まった中国版に続きアジア言語では2番目。日本においても国際的な視野に立った分析記事の必要性が高まっておりそのニーズに応えられる」と語り、Dow Jones& Companyのグローバル戦略の一環であることを示した。現在、中国語版の会員数は70万人を超えている。

 こうした一方で、WSJ日本版は当初から有料モデルで展開する。新聞社など日本のメディアサイトは無料購読が主で、有料化に踏み切っているところは極めて少ない。その中にあって、富山県富山市に本拠をかまえる「北日本新聞社」は、2010年1月1日から「ウェブ新聞」を新たに創刊し、朝刊の購読者か有料会員登録者であれば記事を閲覧できるように、事実上の有料化に踏み切るという動きもある。

WSJJの代表取締役であり、SBIホールディングス代表取締役執行役員CEOの北尾吉孝氏 WSJJの代表取締役であり、SBIホールディングス代表取締役執行役員CEOの北尾吉孝氏

 WSJJの代表取締役である北尾吉孝氏は「1996年に開始したWSJの電子版は、無料コンテンツが多数占めているインターネットにおいて既に成功している数少ない有料オンラインメディアで、それを日本で展開できる意義は非常に大きい」とし、日本初の本格的な有料オンラインメディアとなることを強調した。

  • 日本の有力新聞社は広告モデルが主体で有料モデルは確立されていないと説明。

  • 北尾氏は具体的にGoogleの決算記事を例にメディアの分析力を比較。

  • 日本のメディアの分析力を「これを投資家が読んだら『最高益』と『成長鈍化』の表現のどちらが有益か」と痛烈に批判。

 また、北尾氏は証券や銀行、生損保など「ネット金融を中心とした金融コングロマリットを展開するSBIグループとのシナジーは非常に高い」とし、SBI証券の顧客にWSJ日本版の記事を配信するなどプロモーションや広告の出稿など、SBIグループをあげて協力する姿勢を示した。

 さらに、WSJJの業績見通しやWSJ日本版の目標会員数などは特に公表していないが、「SBIグループの決まりとしては3年以内に黒字化するということがある」とした。加えて「我々としては中国やインドのメディアともパートナーシップをはかり、日本の顧客に情報を提供する計画もある」と述べた。

  • SBIグループをあげてWSJ日本版を支援。

  • 金融コンテンツでは中国やインドのメディアとのパートナーシップも検討している。

 このほか、Dow Jones& Companyは日本経済新聞社や読売新聞社とも協力関係にあるが、Larsen氏は「読売新聞は重要なパートナーで2009年3月からWSJアジア版を日本で印刷・販売しているがWSJ日本版のローンチには直接関わっていない。同様に日本経済新聞社も貴重なパートナーで、今後さまざまな取り組みがあるだろう」と語った。

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