アドビシステムズは、同社が研究用サイト「Adobe Labs」で11月18日に公開したアプリケーションランタイム「Adobe AIR 2.0パブリックベータ版」(以下、AIR 2.0)に関する記者説明会を開催した。
プレゼンテーションは、アドビシステムズでデベロッパーマーケティングスペシャリストを務める轟啓介氏が担当。AIR 2.0と同日にパブリックベータを公開した「Flash Player 10.1」の概要を解説し、Flashを中心とした同社の製品群の総称である「Adobe Flash Platform」におけるランタイムの位置付けを改めて確認した。
AIR 2.0は、当然ながら1.0のアップグレード版という位置付けになる。2.0から、これまでサポートされていなかったUSBストレージデバイスの検出や、各種OSのネイティブインストーラのサポートといったネイティブプロセスに対応して、OSとの連携を強化した。これによって、AIRアプリケーション側からOSの機能を利用したり、他のネイティブアプリケーションを起動して相互通信を図るといった使い方が可能になる。
また、サーバ機能を搭載することで、P2Pによるコミュニケーション型アプリの開発に応用できるという。UDPの送受信も可能になっているため、リアルタイム通信を取り入れたアプリケーションも実現可能だ。
また、HTMLのレンダリングエンジンには、「Safari 4.0.3 Webkitブランチ」と同等のWebkitを採用。これによってHTML5やCSS3といった新フィーチャーの活用が可能になった。JavaScriptエンジンには「SquirrelFish」を採用し、処理速度の向上を図っている。
さらに、モバイル対応の準備としてパフォーマンスの向上やメモリ消費の削減、デバイス機器向けの新たな入力方法への対応といった機能を搭載している。今後、Flash技術がブラウザの中からデスクトップ、さらにはスマートフォンをはじめとしたモバイル機器へとその守備範囲を広げてゆく道筋を示した。
轟氏は機器の垣根を越えて流通可能なコンテンツを「コンテクスチュアルアプリケーション」として説明する。
この言葉は、ブラウザやOS、デバイスや通信の状況に応じてパフォーマンスを最適化できるコンテンツを指す用語として、近年使われ始めている用語だという。「特にここ数年で到来すると予測できるモバイル通信の4G時代に突入する前に、開発者は、ネット環境とそれに伴ったニーズの劇的な変化に対応する準備を始めておくべきだ」と轟氏は述べる。
屋内外を問わず高速通信の恩恵に預かることが可能になると、コンテンツはアプリケーション単体の機能として以上に、常にサービスへアクセスできる状態の保持、あるいはシームレスなサービスとの接続といった環境そのものの質に対しても善し悪しが問われ始める。
AIR 2.0はそのような時代の到来を見越しつつ、オフライン時のローカルストレージとのデータのやり取りや、デスクトップ上にある程度リソースを持たせておく機能を提供。轟氏はNew York Timesのサービスを事例として紹介し、機器もユーザーの状況も問わず、アプリケーションを通していつでも同じ質のサービスにアクセスできる「コンテクスチュアル(状況に対応可能)な」アプリケーションは、数年のうちにニーズを延ばすと予測する。
「重要なのは開発者がそうした設計をしたいと考えたとき、特別な技術の検討なしに実現までもっていける状況を提供すること。特にFlash Platformのツール群とAIR 2.0、Flash Player 10.1といったランタイムには、そのような考え方が反映されている」と述べた。
なお、AIR 2.0およびFlash Player 10.1の正式版は2010年前半のリリースを予定している。
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