Googleは、最新版の「Google Chrome」に同社の「Native Client」技術を組み込み、ウェブアプリケーションを実行するための新しい処理能力を追加した。
Native Client(短縮形は「NaCl」)は、成功すれば、ウェブアプリケーションと、コンピュータのOSでネイティブに動作するアプリケーションとの間の溝を埋める助けになるであろう野心的なGoogleのプロジェクトである。これにより、「Google Docs」のようなウェブアプリケーションが、「Microsoft Office」との戦いで有利な立場に立てるようになるだろう。そしてこれは、「Windows」に対するGoogleの「Chrome OS」プロジェクトの後押しになるだろう。
大半のウェブブラウザは、JavaScript、もしくはFlashによって記述されたプログラムを実行する。JavaScriptもFlashも、プログラムの処理速度をネイティブソフトウェアよりも低下させるプログラミング基盤の上で実行される。しかし、Native Clientでは、プログラマーはAMDの「Athlon」やIntelの「Core」といったx86チップモデルに直接アクセスするソフトウェアを記述することができる。Native Clientソフトウェア自体の特別なプログラミングツールとスクリーニング機構は、これまで危険とされてきた、実行可能なプログラムをネットからダウンロードするというプロセスに対し、安全性を提供するように設計されている。
米国時間10月2日にリリースされたChromeのバージョン4.0.220.1は、「WindowsでNative Clientをビルトイン機能として初めて導入する」とGoogleのエンジニアリングプログラムマネージャーであるJonathan Conradt氏はブログ記事で述べた。これまで、同ソフトウェアはブラウザプラグインとしてのみ利用可能だった。
さらに、Googleは、さまざまな基本的なテストや、Native Clientで実現できることに関するより詳細な例も提供した。ただし、それらを機能させるには、多少の専門的な設定が必要である。Googleが提示した例には、レイトレーシングによって描画された回転する球体や、「Game of Life」、1人称シューティングゲームの「Quake」などがある。
Native Clientを見れば、Googleが同社のウェブプログラミング計画を前進させる手段として、いかにしてChromeを利用しているかをうかがい知ることができる。Microsoftのような一部のライバルは、コンピュータ上でネイティブに動作するソフトウェアの分野で大規模な事業を展開しているが、Googleはインターネット上のセントラルサーバでソフトウェアを実行することを望んでいる。
このクラウドコンピューティング型アプローチには、いくつかの利点がある。例えば、より簡単にコラボレーションや文書の共有ができるほか、いかなるPCやスマートフォンからでも、文書の閲覧や編集を行うことが可能である。Googleはウェブがきっかけで誕生した企業であるため、ウェブではライバルに対して地の利がある。しかし、アプリケーションの基盤として見ると、ウェブはネイティブのアプリケーションに比べて速度が遅く、原始的な状態のままだ。
そうした状況を変えようとする取り組みは、Native Clientだけではない。Googleは、プログラムがハードウェアアクセラレーションを使用した3Dグラフィックスを作成できるように設計された、「O3D」と呼ばれるプラグインも用意している(これも、同社がChromeに組み込んでいるプロジェクトだ)。O3Dは、Mozillaと「Firefox」が「WebGL」と呼ぶ関連した取り組みよりも、高いプログラミングレベルで機能する。
Googleは2008年12月に、初めてNative Clientをリリースした。2009年6月には、NaClのセキュリティモデルに対する自信を明らかにし、Native Clientを研究段階から生産段階に格上げすると発表した。
Native Clientは新しいバージョンのChromeに組み込まれてはいるものの、このリリースの利用には多くの条件がある。まず第1に、Native Clientは開発者向けプレビューバージョンのChromeのみに搭載されており、現在のところ、Windowsだけに対応している。第2に、Native Clientはデフォルトでは無効になっている。説明ページによると、Chrome起動時にコマンドラインスイッチとして「--internal-nacl」を追加することで、有効になるという。
この新しいバージョンのChromeでは、ほかにもさまざまな機能が提供されている。顕著なものとしては、ユーザーが同ブラウザをカスタマイズするための拡張機能を対象とする、さまざまな更新が挙げられる。
例えば、拡張機能はブラウザ設定用のスパナマークのメニュー内でオプションとして表示されるようになった。さらに、ユーザーインターフェースという観点から見ると、ブラウザアクションインターフェース(以下の画像を参照)が追加され、拡張をボタンとしてChromeのメインツールバーに追加できるようになっている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ
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