「モバイルアプリのチャンスを見過ごすな」、GSMAが携帯電話事業者に呼びかけ

 米Apple、米Googleなどの新規参入者がモバイル業界に大きな振動を与え、新しい時代が幕を開けつつある。ここで大きくフォーカスがあたっているのが、携帯電話に搭載するアプリケーションだ。現在、Appleなどのベンダーが個々にマーケットを開設し、アプリケーション開発者の囲い込みを図っている。この動きについて、モバイル業界団体のGSM Association(GSMA)は携帯電話事業者に対し、「このままでは大きなチャンスを見逃す」と警告する。

 GSMAは無線通信方式「GSM」の普及を目的として、1995年に設立されたモバイル業界最大の団体だ。800社以上の携帯電話事業者を中心に、219カ国から1000社以上が参加している。

 2008年、米MicrosoftからGSMAの最高マーケティング責任者(CMO)に就任したMichael O'Hara氏に、GSMAの見るモバイルアプリケーションの現状や課題について聞いた。

Appleの垂直統合がモバイルインターネットを普及させた

Michael O'Hara氏 GSMAの最高マーケティング責任者(CMO)、Michael O'Hara氏

 O'Hara氏は、GSMAやGSMAに加入する携帯電話事業者や端末メーカーが提唱し続けてきた「モバイルインターネット」を世界に普及させたのが、通信業界外のAppleであることを認める。

 Appleの成功要因には、タッチ画面に代表されるそれまでにない端末、Appleブランドなど、さまざまなものがあるとしながら、着目すべきは「アプリケーションストアと端末の垂直統合型モデルが開発者、ユーザーを引き付けた点」とO'Hara氏は語る。

 Appleは開発者に対しAppleと売り上げを分け合うレベニューシェアモデルを、ユーザーに対しては使い慣れた「iTunes」をベースとするアプリケーションストア「App Store」を提供。これにより、モバイルアプリケーション市場を離陸させた。だが、ここには「携帯電話事業者が加わる余地はない」とO'Hara氏は言う。携帯電話事業者はネットワークを提供するにとどまり、アプリケーションの売り上げはAppleと開発者に流れるからだ。

 そのAppleにならい、フィンランドのNokiaや、Googleの「Android」、「Blackberry」で有名なカナダのResearch In Motionなどが、それぞれ端末と垂直統合したアプリケーションストアを展開している。さらにMicrosoft、英Sony Ericsson、英Vodafoneなども参入計画を明らかにしている。

 しかし、このような状態を「アプリケーションの島を作り出している」とO'Hara氏は危惧する。それぞれのプラットフォーム向けに開発されたアプリケーションは「移植性が低く、ネットワークの資産を無視した上流のソリューションにのみフォーカスしている」(O'Hara氏)。つまり、ほとんどのアプリケーションは、土台となるネットワークと密に連携することがない。また、各社も自社プラットフォームで動くアプリケーションの提供のみに注力している。

 これは、GSM、W-CDMAといった世界標準により規模の経済などのメリットを狙うというモバイル業界のこれまでのアプローチとは異なる。「ネットワークを提供する携帯電話事業者は、大きなチャンスをみすみす見逃している。なんとか手を打つ必要があるのではないか」(O'Hara氏)

 O'Hara氏はさらに、携帯電話事業者が直面している課題も指摘する。固定通信の加入者が11億人であるのに対し、モバイルは40億人。後者が通信市場の中心になっていく一方で、ネットワークトラフィックの増加やARPU(ユーザー1人あたりの月間利用料)の減少により、携帯電話事業者の収益は圧迫されている。このため、「携帯電話事業者はモバイルブロードバンドがもたらすコンテンツやアプリケーションから収益を得る必要がある」という。

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