インターネット上での著作権侵害行為を厳格に取り締まるフランスの取り組みが論議を呼んでいるが、同国の最高司法機関が現地時間6月10日、著作物の違法ダウンロード常習者に対しインターネットアクセスを禁止する法律条項を認めなかったことで、この取り組みは大きな打撃を受けた。
フランス憲法評議会は、2回の警告後に著作権を侵害した人のインターネットアクセスを遮断する権利を新設政府機関に与える重要な法律条項について、違憲との判断を下した。評議会は、「公共のオンライン通信サービスへのアクセス」は人権であり、裁判官のみがアクセスを遮断する権限を持つべきである、と述べた。
この「スリーストライク」法は、Nicolas Sarkozy仏大統領の支持のもと、5月に仏国民議会で可決された。この法律では、著作物を違法に共有していることが発覚した場合、インターネットサービスを停止することによって、デジタル著作権侵害者を罰すると定められていた。この法律により、HADOPIという名前の新しい政府機関が誕生し、違法なファイル共有をしているユーザーに対し、警告文を送付する役目を担うことになっていた。
この法律では、著作権侵害の容疑をかけられたユーザーは、自らの違法行為に関して2回の警告を受け、その後にもう1回侵害行為の疑いがかけられると、2カ月から1年間の期間、インターネットアクセスが遮断される決まりだった。さらに、ユーザーはブラックリストに名前が載り、別のISPと契約することもできなくなるはずだった。
消費者および表現の自由の擁護派からは、この法律ではインターネット著作権侵害の嫌疑をかけられた人が、裁判所で政府の告発に反論する権利が与えられていないと主張し、同法に対する異議が唱えられていた。さらに、反対派は、同法を足がかりにして、政府が市民の個人的なプライバシー権を侵害するようになることも懸念していた。
最も攻撃的なデジタル著作権侵害対策規制法の1つと見なされている同法は、フランス、そして世界中で、さまざまな議論を巻き起こした。欧州議会は、先手を打って、EU各国の政府が、裁判所令状なしにユーザーのインターネットアクセスを遮断することを禁じる法案を可決した。
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ
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