社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は2月27日、同日付で公正取引委員会(公取委)から受けた独占禁止法違反(私的独占)に関する排除措置命令について、「事実認定および法令適用の両面において誤ったものと考えており、到底承服できない」とし、法令手続きに従って審判請求する方針を明らかにした。
公取委によるJASRACへの排除命令は、JASRACが著作権管理している楽曲の使用に関して、テレビやラジオなどの放送事業者と結んでいる「包括契約」が、他の音楽著作権管理事業者の参入を妨げているとして発令されたもの。公取委は、この契約体系が「放送事業者が放送番組において利用した音楽著作物の総数に占めるJASRAC管理楽曲の割合が使用料に反映されていない」とし、独占禁止法2条5項の私的独占に該当すると判断。徴収方法の変更などを求めた。
JASRAC側が「事実認定が異なる」としているのは、「新規管理事業者参入後、JASRAC管理楽曲が他の管理事業者に移ったという事実はなく、従ってJASRAC管理楽曲のレパートリーが新規事業者参入後に減少したわけではない」という点。管理楽曲自体が減っていないのだから、利用割合に応じて契約使用料を減らすという考え方は当てはまらないとの認識を示した。
また、今回の排除命令やそれに関する報道などについて、「JASRACが放送事業者に圧力をかけ、他の事業者が管理する楽曲を使わないように仕向けた、という印象を(一般の方などに)与えたのであれば心外だ。そのような事実は一切なく、公取委側にも確認している」(JASRAC理事長の加藤衛氏)と説明。あくまでも焦点は包括契約と使用実態の整合性であると強調した。
今回の件について、放送事業者からは、戸惑いの声が挙がっている。会見に出席したあるテレビ局関係者からは、「審判の成り行きを見守っていく考えだが、放送番組に音楽が利用できなくなるのは困る」とのコメントが聞かれた。これに対し、JASRAC側は「来週、公取委側から適切な徴収方法に関する指導があり、まずはそれを聞いてから」としつつも、「(使用楽曲ごとの個別徴収など)求められてもすぐに実現できないこともある」と公取委の動きをけん制した。
また、事前通知書がJASRACに届けられた時点でコメントを求めた際に「(JASRACと)共同歩調の部分もあり、当面は差し控えたい」としていたNHKは今回、JASRAC側が正式に対応を公表したことを受けて次のようにコメントした。「NHKはJASRAC以外の著作権管理団体(イーライセンス、ジャパン・ライツ・クリアランス)とも契約した上で楽曲を利用している。当面はJASRACの対応を見守り、対応を考える」(広報局)。あくまで一ユーザとして推移を見つめる考えだという。
JASRACはインターネット動画配信事業者や動画共有サービス事業者とも包括契約を結んでいる。これについては「今回の排除命令は放送に対して出されたもの」(JASRAC常任理事の菅原瑞夫氏)と影響を否定。その上で「ネット関連の包括契約においては、最初から使用楽曲の全曲報告が盛り込まれており、使用料と使用実態の関係性を疑われた今回のケースには当てはまらない」とした。
放送における使用楽曲の全曲報告については、「NHKや民放キー局、またFMラジオ局などではすでに全曲報告の形が整えられており、ローカル局やAMラジオ局に関しても対応が進みつつある」とし、使用楽曲数に応じた料金徴収を準備している段階だとした。
公取委が排除命令を出すにいたった事実関係について、JASRACは徹底抗戦の構えを示す。さらに加藤氏は、「音楽は嗜好性が強く、その競争力はレパートリーの数によって決まるものではない」とし、JASRACの圧倒的なレパートリー数が競争原理を阻害する一因だとする公取委側の判断にも反論していた。
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