まつもと氏は「リスクテイクとチャレンジも重要」と語る。「チャレンジしなければ変化はない。ただし、外の環境の変化を制御できるものではなく、箱の中に留まっていては意味がない。箱の中で安住していればハッピーだった時代は終わった。チャレンジすれば失敗する可能性もあるわけだが、何もせず、ジッとしていることもリスクになりうる」(同)
最新の技術が次々現れるのはITの世界に限らない。広い分野への知見が求められるエンジニアにとっては、「まだ良く知らない、勉強するのはたいへん、とても余裕はない――などといってはいられない時代になっている。価値を創造することが大事だ。自分自身の価値を創造しないとハッピーなエンジニアにはなれない」(同)という。
その具現化のひとつとして、まつもと氏は「ラストマン戦略」を挙げる。
「ネットワークプログラミング、ウェブフレームワーク、Rubyなど、ある分野で何か聞こうというとき、この人に聞けば一番良いという人がいる。直接教えてくれたり、人を紹介してくれたりする。そんな人は大切にされることになり、ハッピーになれる」(同)
ラストマンになるためには「コネクションが重要」になる。「本人がすべて知っている必要はない。たとえば、ネットワークプログラミングについて何でも知っている人などいないだろう。要は、ある目的にたどり着くまでの道しるべになれるかどうかだ。どんなキーワードで検索すれば良いか、どのサイトにアクセスすれば良いか、誰に聞けばよいか」。
これらの要素をできるだけ多くもつには「勉強会などにより人的なコネクションをつくる」ことが大きな強みになる。
まつもと氏は「私もRubyをつくり、多くの人々に使ってもらい、さまざまな注文を受け、世界中からフィードバックを得た。すぐれたエンジニア、プログラマーだったわけではなく、コネクションやオープンソースソフトをテコにしてここまできた」と自身の歩みを振り返り、「一歩踏み出すことが必要だ。何かをテコに高いところに登れば、位置エネルギーを引き出せる」と述べた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」