だが、井口氏によれば、そのメカニズムは「実はすごくシンプル」なのだという。「ライブビュー(目の前の空間)をダイレクトにiPhoneのスクリーンに表示し、ロケーションのディレクション情報をもとにサーバサイドから必要な情報を集めてきて表示する。これが基本的な仕組みです」
「これをいわゆる情報アプリケーションの通常の方法でやると、非常に多くの手間とコストがかかります。そうではなくて、消費者が直接これがおいしいとか、あそこがいいよとか、この店行きなよ、と自由に勝手気ままに書き込める。他の人はそれを読める。そのための基本的なツールを提供していこうと考えています」
下の表は従来のウェブとセカイカメラの違いをまとめたものだ。
これまでは部屋の中で、キーボードというインターフェースを用いてPCからウェブにアクセスしていた。情報の構成はハイパーリンクが一般的だった。それがセカイカメラを使うことによって、モバイル環境で、「サーチ」ではなく「見る」ことによって情報を得られるようになる。しかもリアルタイム、リアルスペースの情報だ。これらがセカイカメラの新しさだという。
「最初はテキスト情報を中心に扱うことになると思いますが、単純にポストイットを貼り付けるということではなくて、例えばミュージックデータやムービーをリアルな場所に貼り付けらるようになる。音楽の試聴盤、あるいは映画の予告編を、関連のある場所や興味のある人たちに向けてリアルな場所でディスプレイできるということです」
何かを伝えたい、誰かに残したい--。このような感情は人間の根源的な欲求であると井口氏は言う。
「マーキングという行動があります。セカイカメラが何に使われるのかということを説明するときに、ちょっと下品なたとえですけど、犬が電信柱におしっこをするという例を出します。よく修学旅行に行って、○○参上とか書きますが、そういう部分で非常に根源的なニーズとして、空間に情報を貼り付ける、あるいはそれを読むという行為に、人間は動かされるのではと思っています」
キャッチフレーズは「Air Tagging The RealWorld」。タグをリアルな空間に貼り付けていく。そして「Look up、not down」。デバイスに没入する形で情報を得るのではなく、まさに情報そのものがあるリアルな空間を見つめよう--。井口氏が呼びかけると、会場からは大きな拍手が返ってきた。
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