動画の作成素材をユーザーが提供し、ほかのユーザーの動画作成を支援できるニコニコ動画の「ニコニ・コモンズ」が8月中旬より開始する。自分のイラストや楽曲、アニメなどを素材として使ってよいと明示することで、ほかのユーザーが二次創作物を作りやすいようにするというものだ。
自分の創作物を他人が自由に使えるようにするという点では、クリエイティブ・コモンズも同様だ。ニコニ・コモンズとクリエイティブ・コモンズはどう違うのか。ニコニコ動画を運営するニワンゴの取締役である木野瀬友人氏が7月29日、札幌で開かれている著作権に関するイベント「iSummit 2008, Sapporo」にて語った。
クリエイティブ・コモンズは、NPO法人のCreative Commonsが定めた著作権に関するライセンス。いわば法的な手段だ。しかし木野瀬氏は「ニコニコ動画にあてはめようとしたとき、法的手段という部分がひっかかった」という。
「法的手段で縛るより、個人の良識、美徳に頼ったほうがいいのではないか」(木野瀬氏)
米国生まれのクリエイティブ・コモンズに対し、ニコニ・コモンズは法闘争などを好まない「より日本的な手段」(木野瀬氏)とのこと。クリエイティブ・コモンズが法律に基づくライセンスであるのに対し、ニコニ・コモンズはユーザー間の合意によるガイドラインに過ぎないとも言う。
ただし、ニコニ・コモンズはクリエイティブ・コモンズに対峙するようなものではないようだ。「ニコニ・コモンズはCreative Commonsと話をしながら作っていった」(木野瀬氏)といい、クリプトン・フューチャー・メディアが運営するコンテンツ投稿型コミュニティ「ピアプロ」で採用している独自のライセンス体系なども含めた、「権利のオープン化の動きの1つ」(木野瀬氏)という位置づけだ。
ニコニ・コモンズの大きな特徴の1つが、素材のライセンス条件を投稿者が後から変えられる点にある。投稿者の気が変わった場合でも柔軟に対応できるようにした。ただし、「その変更履歴はシステムが記録しており、すべてのユーザーが見られるようになっている。欲張りな変更は炎上の元だ」(木野瀬氏)と、安易な変更には釘を刺した。
なお、派生作品の著作権については、「制作者からすると自分に著作権があると思うだろうが、素材提供者はサブライセンス権に関する主張ができる。『自分の作品に似ている』というクレームがあった場合の対応はケースバイケースになる。ただ、人間同士なので、コミュニケーションの場を設ければ、いきなり殴りあいになるということはあまりないだろう。ライセンスや権利譲渡などの手段もあり、平和的解決が望めるのではないか」と当事者間での解決に期待を寄せていた。
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