サンフランシスコ発--Tim O'Reilly氏は当地で開催されている「Web 2.0 Expo」で基調講演を始め、ステージを歩き回ってインターネットが持つ力の福音を聴衆に説いた。
「インターネットはあらゆるものの地球規模のプラットフォームになりつつあり」、それによって世界のすべての人がこれまで以上に賢くなるとO'Reilly氏は述べた。さらに「それは識字能力の発展や都市の形成などに匹敵する、人間強化における驚異的な革命である」と続けた。「世界のあり方に大きな変化が訪れているのだ」(O'Reilly氏)
われわれはアンビエントコンピューティング(環境型コンピューティング)の世界に突入しつつあり、あらゆるものがインターネットに接続されるようになっているとO'Reilly氏は宣言した。「われわれはコンピューティングのスープに浸っているのだ。Web 2.0はわれわれの周囲のいたる所に存在する」とO'Reilly氏は説いた。これまでTwitter、Facebook、ブログ、SMSの利用に熱中し、部分的にではあるが絶えず注意を向けていた「転向者」の聴衆は同氏の説明を聞いて大きくうなずいた。
O'Reilly氏はインターネット革命年という高所から望遠鏡を使って地上の展示フロアをのぞき込んだ。そこにはIBMやOracleなど、前年よりも多くの大企業のプレーヤーたちがひしめき合っていた。これはwiki、ブログ、タグ、ソーシャルネットワーク、集団的知性といったテクノロジとともにWeb 2.0が成熟しつつある兆候である。
エンタープライズ向けのWeb 2.0製品を開発すれば大きな利益を上げることができる。また、集団的知性を活用すれば豊富な利益が約束された国を実現することができる(O'Reilly氏が率いる企業は最近、このトレンドを利用するためにエンタープライズ向けのコンサルティング業務を開始し、また同氏は発言の中で大胆にも自分の出資先の1つであるWesabeを宣伝した)。
Web 2.0とクラウドコンピューティングの成熟はプラットフォームとしてのインターネットに向かう動きであるが、いくつかの問題点もあるとO'Reilly氏は指摘した。市場価値の集中と統合である。これによって市場を支配することができる大勝利者が高く評価されるようになる。O'Reilly氏は、このような状況はOracleやMicrosoftのような大規模で中央集権化されたプレーヤーが中心となっていた世界に逆戻りしかねず、それによって技術革新やオープン性が阻害される危険性があると警鐘を鳴らした。
逆説的なのは、オープンで権力が分散化されたネットワークの上に構築されたアプリケーションによって新しい権力の集中(Google、Facebook、Amazonなど)が生まれようとしていることであるとO'Reilly氏は指摘した。また、強大な権力と勢力が少数の企業に集中するという有害な効果を少なくするために、相互運用性のレイヤを組み込むことを提唱した。
つまりインターネットは重要でありかつ革命的な力を持っており、集団的知性を有効に活用することがWeb 2.0の中核であり、また金を儲ける方法であると、Web 2.0の指導者であるO'Reilly氏は述べたのだ。
しかし、O'Reilly氏はWeb 2.0で金を儲けたり、インターネットの革命的な力を承認したりするだけでは十分ではないという認識も示した。そして、出席した数千人の聴衆に向かって、政府が市民に迅速に対応できるようにするとか、インターネットを基盤にした取り組みによって世界的な免疫システムを構築するといった大きな目標を持つようにと訴えた。いつも金儲けや人知の増大ばかりを考えているわけではないのだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス