Mr.Children、スピッツなど人気アーティストの楽曲約5000曲の著作権を管理するジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)は3月27日、動画共有サイト「YouTube」の日本版内における、音楽著作権に関する包括利用許諾契約をグーグルとの間で締結した。契約期間は1年。ただし、その後は自動契約更新が可能な内容が盛り込まれているものとみられる。YouTubeと正式な利用許諾契約を結ぶのは、国内の音楽著作権管理団体ではJRCが初めて。
JRC代表取締役社長の荒川祐二氏は、今回の締結について「これからの音楽業界、あるいはYouTubeを含む動画共有サイトにいい影響を与えると考えている」と評価。グーグル代表取締役社長の村上憲郎氏も「(包括利用許諾契約によって)YouTube上におけるユーザ利便性が一気に向上することを喜びたい。また、音楽コンテンツ産業の世界的な発展にプラットフォームとして貢献できることを大変うれしく思う」と述べた。
今回の契約締結によって可能となることとして、まず挙げられるのがアーティストおよびレーベルによる公式チャンネルの運営だ。内容としてはプロモーションビデオやライブビデオ、アーティストコメントやインタビューなどの映像をYouTube内に掲載することが考えられる。荒川氏は「ファンとのダイレクトコミュニケーションが生まれ、また動画共有サイトを活用したプロモーション展開ができる」と説明した。
実際、27日にはデンジャー・クルー・レコーズが公式チャンネルを開設。同レーベルに所属するアーティストの各種公式動画がアップロードされる予定だ。デンジャー・クルー・レコーズ代表取締役社長の大石征裕氏も「日本国内におけるCDの売り上げが落ちる可能性はあるが、その分、配信面では海外展開が容易に図れるようになる」と期待を込めた。4月4日にはフォーライフミュージックエンタテイメントも公式チャンネルを開設する予定で、荒川氏は今後もこうした動きが増えるとの見通しを示した。
一般ユーザー側で可能となるのは、JRC楽曲を用いたカバーバンドのライブシーンなどの投稿だ。「スピッツの楽曲などは、(卒業式の)学校行事で歌われることも多い。それらをYouTube上にアップロードでいるようになれば、新たなコミュニケーションが生まれることもある」(荒川氏)
逆に対象外となるのは、著作隣接権や著作者人格権など他の権利を侵害する恐れがあるもの。仮にJRC楽曲であっても、ユーザーが勝手にプロモーションビデオをアップロードするのは対象アーティストの著作隣接権侵害にあたるため認められない。荒川氏は「(アーティスト本人は)動画アップロードに前向き」と説明したが、アップロードするかどうかを判断するのはあくまで本人や所属事務所などだ。
対象楽曲を利用した放送番組についても、映像の著作権が放送局にあり、また出演タレントの肖像権を侵害するおそれがあることから認められない。「我々のほうから全く削除要請を出さない、ということはない」として、荒川氏は契約外のケースにあたることを強調した。
YouTubeと国内最大級の音楽著作権管理団体であるJASRACとの交渉状態について、グーグルの村上氏は「協議中」として言明を避けた。放送事業者やJASRACといった他の権利者・団体の交渉とは完全に独立した契約締結であるものとみられ、今後、これら他方へ与える影響について注目が集まる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」