「目指しているのは、1人でも多くの人に使ってもらうこと。すべての人に満足してもらえるように新しいサービスを投入し、オリジナルコンテンツを作ってもらえるようにする。単月の黒字化を目指すことを第一とする時期ではない」――ドワンゴ代表取締役社長の小林宏氏は、同社がシステムを開発し、子会社のニワンゴが運営する動画コミュニケーションサービス「ニコニコ動画」について、ひきつづき投資時期にあるとの考えを明らかにした。
ニコニコ動画は、動画上にユーザーがリアルタイムにコメントを付けられるサービス。ほかのユーザーと動画につっこみを入れて盛り上がれる点が受け、瞬く間に会員を集めた。会員数は3月3日時点で560万人。同社の発表によれば、ユーザー1人あたりの平均利用時間は1日1時間という。また、携帯電話向けのサービス「ニコニコ動画モバイル」も登録会員数は119万人となっている。
回線コストを中心に運営費用がかさむため、「現時点では『垂れ流す』とまではいかないけれども赤字」(小林氏)という状況だが、2008年9月期中の単月黒字化を目指している。
この目標については変えていないが、ドワンゴとしては黒字化を優先してサービスの成長が妨げられるようなことはしたくないという考えだ。「単月黒字化しても、これまでの投資をすべて回収するにはもう少しかかる、というくらいでいい」(小林氏)
「世界に直接出るという計画はないが、世界に誇れる日本発のサービスとして大きく育てたい」(小林氏)
ニコニコ動画の会員数については、2008年に1000万人規模、2009年には1500万人規模を目指している。
ニコニコ動画の収益は、大きく(1)有料会員からの利用料金、(2)バナー等の純広告、(3)アフィリエイト広告「ニコニコ市場」の3つからなる。ニワンゴによれば、2月末時点での有料会員数は18万9000人。会員費は月額525円、もしくは90日間で1680円のため、月額約1億円の収入がある計算となる。また、2月の広告売り上げは3200万円という。ニコニコ市場についてはAmazon.co.jpと、ドワンゴが運営するモバイルサイト「dwango.jp」の2つの商品を扱っており、この2つを合わせた総取扱高が2億8600万円としたが、このうちニワンゴの収入がどの程度かは明らかにしていない。
小林氏は「広告とニコニコ市場の売り上げは当初の予想通りだが、有料会員は昨年の12月ごろからペースダウンしている」と打ち明けた。これを打開するために、有料会員向けのモバイルサービスなどを検討しているという。また、サイトの導線を改善して有料会員登録に結びつけたいとした。ただし、無料のユーザーでも楽しめるようにして利用者数を伸ばしたい考えで、「無料で使っても満足できるが、もっと楽しみたいから有料会員になる、というようにしたい。有料会員になることを押しつけるような露骨な誘導はしたくない」とした。
また、サービスの拡大に合わせて、ドワンゴの技術者を倍増させる計画であることも明らかにした。現在は約100人だが、これを2009年に200人にまで増やす。「やりたいことをやればやるほど、やりたいことが増えてきた」(小林氏)。学歴などは問わずに募集するとしている。
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