米国議会はまもなく、「Violent Radicalization and Homegrown Terrorism Prevention Act of 2007(VRAHTPA)」という法案を承認する見通しだ。これはインターネットユーザーにとって、必ずしも朗報とはいえない。
私が「朗報とはいえない」と書くのには理由がある。VRAHTPAは、新たに連邦委員会を設置し、「極端な信念システム」を持つ米国民や「観念的に暴力に基づく」人々を調査するからだ。米国政府はこの取り組みに2200万ドルを費やす予定だ。
もちろん、VRAHTPAが成立したからといって、何かが変わるわけではない。技術的には、National Commission on the Prevention of Violent Radicalization and Homegrown Terrorismといわれる委員会を設立するもの以外、何も法案は提出されていない。
しかし、保全許可を目的に、主として政府関係者がメンバーとなる国土安全委員会を立ち上げることは、不快なものとなる可能性がある。この委員会は、政府の反テロ構想により運営され、ほとんどの会合が非公開で行われ、大統領に「極端な信念システム」に関する機密扱いの報告書を提出するからだ。
アラバマ州政府国土安全保障省の検閲集団の例を挙げてみよう。彼らは、国内のテロリストは、「米国政府は個人の権利を侵害しているという米国人か、政府の政策は犯罪的で不道徳だという米国人のどちらか、または両方だ」と信じている。
これを適用すれば、Al Gore氏は国内テロリストということになる。Gore氏は2006年、「わが国の政府執行部門は多くの数の米国民を盗聴しており、あつかましくもこれを継続する一方的権利を擁すると主張している」と発言している。大統領候補のRon Paul氏ももちろん該当するだろうし、Gore氏よりも罪が重いかもしれない。このほかにも、アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)の支持者、電子フロンティア財団(EFF)の支持者、自由論者などの厄介者が対象になるだろう。
下記の法案抜粋を読めば、この委員会が目指すものは何かの感触を得ることができるだろう。この法案はすでに、下院を賛成406票、反対6票で通過し、今後上院で審議されることになる。
インターネットは暴力的急進活動を助長した。この暴力的急進活動とは、観念的に暴力に基づいたもので、米国市民に向けて幅広く、かつ常に送り出されるテロリスト関連のプロパガンダへのアクセスを提供することで、米国における自国産テロリズムプロセスとなっている。
一方で、議会の投票と時を同じくして、議会の委員会は「武器として利用されるウェブ:暴力的急進活動と自国産テロリズムの育成ツールとしてのインターネット」をテーマとした聴聞会を開催していた。参加者の1人は、次のように発言している。「インターネットはさまざまな方法で宗教的な急進主義者を支援する。インターネットにより、だれもが自分自身を権威ある存在にすることができる」
これは、テロに厳しい民主党リーダーが選挙の前段階における試みとして開始したものだ。VRAHTPAの発起人は、民主党議員Jane Harman氏だ。しかし、たとえ象徴的な政治的法案であっても、法案としての生命を持つ。
合衆国憲法は、連邦政府に与えられた制限的権限の中で、「極端な信念システム」を取り締まることを許可していない。VRAHTPAは、思想犯罪を罰するに近い法だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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