UPDATE 日本経済新聞社、朝日新聞社、読売新聞グループ本社の3社は10月1日、インターネット分野の共同事業と新聞販売事業に関する提携を発表した。インターネット事業に関しては、同日に合意書も取り交わされた。
3社は今後、共同で民法上の組合を設立する。事業費は数億円程度で、3社が均等に負担する。同組合では2008年はじめをめどに、3社が提供するニュースや社説などを読み比べできる新しいニュースサイトを開設する予定だ。
サイトの詳細について現時点では明らかにされなかったが、新サイトでは各社の社説や記事を読み比べできるようになるという。また、記事の概要のみを公開し、詳細については各社がすでに運営しているサイト、「NIKKEI NET」「Asahi.com」「YOMIURI ONLINE」に誘導する仕組みになるという。利用は基本無料で、広告での収益により、設立3年での黒字化を目指す。各社が現在ヤフーなどのポータルサイトに記事を販売しているニュースについては、現時点では配信を中止する考えはないという。
また、3社は新聞の販売事業での業務提携を行う。すでに朝日新聞社と読売新聞グループ本社は販売の乗り入れを北海道の山間部にて試験的に実施しているが、それを全国規模に広げていきたい考え。
さらに、災害時の新聞発行についても協力体制をとる。通常、新聞社は災害時に備えてバックアップのシステム用意しているが、今後は紙面制作や印刷の代行、輸送の支援などを相互に行う予定。今後、2008年3月までに正式な協定を結ぶ。
「ネットを活用して新聞を断固維持していく」――10月1日に都内で開催された会見で 読売新聞代表取締役社長の内山斉氏はこう語った。
先日、マイクロソフトと提携し、MSN産経ニュースの提供を発表した産経新聞グループでは「ウェブファースト」を標語に掲げてウェブと紙媒体の編集を統合する姿勢を打ち出したが、今回の発表はあくまで紙媒体の販路拡大のためにウェブを利用するという姿勢だ。
日経新聞社代表取締役社長の杉田亮毅氏は、現在インターネットで数多くのニュースが公開されているが、新聞社の記者が書いたニュースが圧倒的に多いと主張。「ネットに新聞が負けるのではないかと言われるが、我々としてはネットにおける役割が大きいことを示す」と語る。杉田氏は新聞社がネット上でニュースを配信することにより、新聞への信頼、期待を高め新聞の購入につなげる「Paper with IT」というスローガンに掲げる。今後はそのスローガンを3社で推し進めたい考えだ。さらに、今回の提携については「新聞のポリティー(政治性)の維持、販売網の維持という2つの要素のための提携である」と意図を説明した。
「若者の活字離れ」が取りざたされ、ニュースをネット上だけで閲覧するというケースも見られるが、内山氏によると「ネット経由で万単位の新聞申し込みがある」という。「ヤフーのニュースで満足する人もいるだろうがそれはそれでよい。だが3社でないとできないものを作るので、それを見て(ウェブで見られる概要だけでなく)フルの情報を欲しいと思う人たちも出てくる」(杉田氏)と期待を寄せる。
販売については朝日新聞社と読売新聞グループの提携を拡大する形で進めていく。まずは年内に大阪西部で実施する予定で、2008年には鹿児島県をモデル地域として販売事業の乗り入れを進める予定だ。朝日新聞社代表取締役社長の秋山耿太郎氏も、都市部に人口が集中し、山間部をはじめとした地域で人口減少や高齢化が進んだことを説明、「配達網あっての日本の新聞」と重要性を説いた。地方では他社が併売していることの多い日経新聞社については「各社独自の販売サイクルを重視する。現在の取引の基本方針は変えない」(杉田氏)とし、長いスパンでの協力体制を検討していく。
今回発表された提携は3社によるものだが、賛同する新聞社が出てきた場合、ネット事業、販売事業ともに「検討させていただく」(杉田氏)とした。
すでにポータルサイトでさまざまな媒体のニュースが見られる中で、3社のニュースに限定したサイトを立ち上げる意味があるかという懸念もあるが、「中身次第。どうすればよりよいものができるのか、若い世代の人たちに考えてもらっているので楽しみに待って頂きたい」(秋山氏)。
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