(社)日本音楽著作権協会(JASRAC)など国内17の権利者団体が参加する「著作権問題を考える創作者団体協議会」は31日、著作物利用促進を図るための創作者団体ポータルサイト設立について基本構想を発表した。
利用したい著作物に関する権利情報提供の窓口を一本化し、利便性向上を図るのが狙い。2009年1月の開設を目指し、調整を進める。
創作者団体ポータルサイトは、著作の権利者情報や利用条件などの検索を容易に行える総合窓口。協議会に参加する17団体が個々に情報データベースを構築し、そこから得た情報を利用者に提供するというもの。保護期間が満了した著作物情報や団体に所属しない権利者情報、また、作者意向によってフリーで活用できる著作物の情報についてもまとめていく。
一方、協議会では著作権者不明などの場合における「裁定制度」についての手続き簡略化を含めた改訂を求める動きを見せており、ポータルサイト構築による情報提供体制強化と併せて、著作物の円滑な利用促進を図っていくとしている。
さらに、日本経済団体連合会が中心となって設立されたコンテンツ・ポータルサイト運営協議会やデジタル時代の著作権協議会(CCD)などと積極的な連携を図り、より総合的なサイト運営を目指す。
2009年1月の開設時にあたっては「恥ずかしくないレベルを」としているが、具体的な情報規模や運営費用などについては検討中とした。初期経費としては200〜300万円程度が見込まれており、「当初から大規模なものを用意するのではなく、利用者の意見を取り入れながら徐々にグレードアップを図っていく」(JASRAC常務理事の加藤衛氏)という。
実際の許諾についてはポータルサイト上ではなく、リンク先の各団体ホームページなどで行うことになる。これについては「ポータルサイト上で行えるようになれば利便性はさらに向上するが、システムを整備するためのソフト費用などが莫大なものとなり、当初経費ではカバーできない」(加藤氏)と説明。将来的な展開についても明言は避けた。
利用にあたっては無料提供を基本線としているが「商用で多数利用するユーザなど、場合によっては将来的に有料化する可能性もある」(加藤氏)と説明した。また、リンク先の団体によっては検索に応じて手数料が発生する場合もあるため、そうした収入の一部をポータルサイト運営に回せることもあるとの見通しを示した。
「著作権問題を考える創作者団体協議会」は、著作権問題全般について連携・協力して活動していくことを目的に2006年9月に設立された団体。同月には著作権保護期間を現行の死後50年から70年に延長することを主旨とした共同声明を発表している。
今回の記者会見においても、「世界標準である70年に延長することは急務」(議長の三田誠広氏)とした旨の発言が複数回見られた。
「生涯をかけて世に送り出した作品が子孫に反映されないのは作家として無念」と延長賛成を訴えたのは日本漫画家協会常務理事の松本零士氏。また、日本のアニメ・漫画が世界的な人気を博している現状を踏まえて「地球上全域を同じ状況にしなければ確執が起こる」と世界標準化の必要性を唱えた。
ポータルサイト構築については「仮に死後50年ルールのままであっても実施する」(加藤氏)とし、あくまで利便性を向上させることが目的であることを強調した。一方、裁定制度改訂を含めた各種著作物利用促進策が、賛否分かれる延長問題に対する「風送り」的要素を持つことも「結果的にそういう形になれば」と暗に認めている。
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