ワシントン発--米連邦議会の公聴会としては異例の開会風景だった。壇上の委員長が開会の言葉を中断し、デジタルビデオカメラを手にして周りの光景を1分あまりにわたって録画したのは、おそらくこれが初めてだろう。
米下院の通信およびインターネットに関する小委員会で委員長を務めるEdward Markey議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、動画関連のサービスを提供するIT企業の幹部が居並ぶテーブルに、手のひらサイズのカメラを向けながら「この機会を利用すれば、史上初めて、委員長席から公聴会の模様を撮った動画をYouTubeに投稿できると思ったのです」と語った。この公聴会に出席していたのは、YouTubeの最高経営責任者(CEO)であるChad Hurley氏、大富豪の投資家で、米国初の高品位テレビ(HDTV)専門テレビ局HDNetの創業者でもあるMark Cuban氏、そしてSlingMediaおよびTiVoのCEOなどだ。Markey議員はさらに「証人のみなさん、カメラに手を振っていただけますか。傍聴席のみなさんもお願いします。今日お集まりのみなさんは実に素晴らしい」と続けた。
こうして撮影された85秒間の動画は、Markey議員の言葉どおり、職員の手によってYouTubeの同議員のページにただちにアップロードされた。米国時間5月10日の午前に開かれた公聴会の目的は、動画サービスの将来を探ることだった。証人としては、ほかにも米国で大人気のテレビドラマ「Hey!レイモンド」の制作者や、The Walt Disney Companyとその傘下のスポーツ専門チャンネルESPN、およびQUALCOMMのMediaFLO部門の幹部らが名を連ねた。MediaFLOは先ごろ、携帯電話向けのテレビ送信技術を実用化している。
しかし、和やかな雰囲気のビデオ撮影が終わるとすぐに、この公聴会は出席した企業にとって単なる愉快な発表会の場などではないことが明らかになった。数人の議員が著作権に関するYouTubeの方針について、同社の創業者であるChad Hurley氏の証言を求めたのだ。
Mike Ferguson下院議員(ニュージャージー州選出、共和党)はHurley氏に対し、今YouTubeにアクセスすれば、著作権で保護されていることが明らかな動画が、即座に何本も見つかるはずだと述べ、「なぜそうした動画を削除しないのか?」と問いただした。
これに対してHurley氏は、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)を順守しているとしてYouTubeの方針を擁護した。DMCAは、一定の要件を満たし、かつ著作権所有者から通知を受けた場合は著作権を侵害しているコンテンツを削除するという条件のもと、インターネットのサイト運営者の法的責任を免除するというものだ(その後、証人席の反対側に座っていたHDNetの創業者であるCuban氏はHurley氏の釈明を批判し、YouTubeによるDMCAの解釈は間違っており、著作権侵害が続いているのに見て見ぬふりをしていると非難した)。
Hurley氏がさらに、YouTubeは「著作権で保護されたコンテンツを掲載することが目的ではない」と主張すると、Ferguson議員は、現実を無視しているとしてHurley氏を批判した。
次に、Bart Stupak下院議員(ミシガン州選出、民主党)が、利用者が動画を非公開にできるYouTubeの機能をやり玉に挙げた。Stupak議員は、この機能が、著作権で保護されたコンテンツ、さらには児童ポルノなどを隠す目的で使われないよう、YouTubeがどのような措置を設けているのかとHurley氏を問い詰め、こうした行為が起こらないよう十分な対策を取っていないと非難した。
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