広告代理店はなくなってしまえばいいと思っている――。
広告代理店向けのセミナー「広告コミュニケーションにおけるクロスメディアの果たす役割」(主催・日本広告業協会)が11月30日、都内で開かれた。この中で行われたパネルディスカッションは、明治学院大学助教授の森田正隆氏による挑発的な台詞で幕を開けた。
パネルディスカッションの参加者は5人。広告主を代表して松下電器産業の岡康之氏とリコーの西田明宏氏。両氏はメーカー主導の新たな広告展開で成功を収めた実績を持つ。一方、新たな広告展開に詳しい博報堂ケトルの嶋浩一郎氏が広告代理店を代表して登壇。ここに森田氏が加わり、CNETJapan編集長の西田隆一が司会を務め、1時間強の討論が行われた。
森田氏が冒頭のように挑発したのには理由がある。
ネットとケータイの普及により、消費者のメディアとの接点と関わり方が変化。一方向型となるマスメディアは相対的な希少性の低下を余儀なくされており、これに連動して広告主のメディア展開も変わりつつある。にも関わらず、従来型の広告展開を提案する広告代理店が多いため、現状を改めなければ、広告主と消費者との最適なコミュニケーションが実現できないと、森田氏は考えている。
ただ、この変化は広告代理店にとって単なる危機ではなく、同時に好機でもあるのではないか。また、好機を成功に導くための新たなクロスメディア戦略とはどのようなものなのか――。これらを探るため、本質に迫った議論をしたいとの思いが、冒頭の森田氏の台詞には込められている。
これを受け、まずは広告主となる岡氏と西田氏がそれぞれの見解を語った。
岡氏は松下電器の新型電池「オキシライド電池」を大ヒットに導いた仕掛け人。メディアの情報波及力を意識した上で、商品コンセプトを明確にした広告展開をより効果的に波及させたことや、オキシライド電池を燃料として有人飛行機を飛ばすキャンペーンで話題を集めたことなどで知られている。
岡氏はまず、ネット時代のクロスメディア戦略における重要な点として、「客の姿が見えることが大事」との考えを示した。その具体的な事例は、上記の有人飛行キャンペーンで、テレビCMに挿入する応援歌を募集したことでサイトが盛り上がったことや、報道発表後のニュース番組で話題になったポイントを次のCMの柱にしたことなど。これらは双方向のコミュニケーションで判明した事実を活用し、より効果的な広告効果を生む出した好例だろう。
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