初めてのインターネットワームが登場したのは1988年。ネットが友好的な場所ではなくなり始めた時期だという。1990年代に入り、1991年にはCIX(Commercial Internet eXchange:米国の商用接続ポイント)が設立され、これにより現状のインターネットに大きく近づいた。1992年にはメールの規格である「MIME」が策定され、1993年にはブラウザ「Mosaic」が登場した。
Netscapeが設立された1994年には、「Green Card」と呼ばれるスパムが発生した。これは米国で労働するために必要なグリーンカードが手に入るといった内容のスパムであり、悪意を持って利用された。ここで利用者は改めてネットが悪意も存在する場所であることを認識したのである。
1995年にはsendmailコンソーシアムが設立され、S/MIMEの策定でよりセキュアな通信が可能になった。1996年に初の無料メールサービス「Hotmail」が設立され、1997年にはマイクロソフトが「Exchange SMTP」でネット事業に本格参入した。またYahoo!も同年に設立され、暮れにはマイクロソフトがHotmailを買収している。そして1998年、それまで多くのボランティアによって運営されてきたsendmailが会社として設立されている。
「Melissa」ウイルスが登場した1999年以降は、ウイルスやワームの発生が顕著になり、加速し始めた。2000年には「I Love You」ウイルス、2001年には「Anna Kournikova」ウイルス、2003年には「Sobig」ウイルスがそれぞれ登場し、猛威をふるった。2000年には米国が暗号化技術の輸出制限を緩和し、sendmail 8.11では暗号化機能を取り入れている。同年にはメールフィルタ技術である「Milter」がリリースされた。
メールの送信者を詐称する技術も多く悪用されるようになり、これに対応するため2003年にはヤフーがYahoo! Domainkeys、2004年にはマイクロソフトがSenderIDをアナウンスしている。これらは同じ問題を異なる手法で解決しようとするものであった。「インターネットは現在も複雑化しており、情報が洪水のように流れている。さまざまな分野でいろいろなことが起きている」とAllman氏はまとめた。
Allman氏は、インターネットが誕生当初から大きく変わり、信頼できる情報が少なくなったという。しかし、メールが信頼できる手段であり続けるために、今後も守っていかなければならないことは確かであり、そのために最大の努力をしていく。現在はメッセージのコンテンツをチェックして危険なものかどうかを判断する手法が中心だが、これでは不十分だという。スパムかどうかの判断は使う人の興味によって変わってくるためだ。
また、Web 2.0のように「メール2.0」があり得るかという質問には、メールへの影響は少ないと答えた。ユーザーインターフェースの改善によって、アプリケーションの使い勝手は向上していくだろうが、SMTPが別のものになるかというと疑問がある。確かにGoogle Earthはすごいと思ったが、メール伝送プロトコルである「SMTP」にこのような劇的な変化をするとは考えられないと述べた。
Eric Allman氏はまた、現代はメールを使いすぎているとも指摘した。電話や、直接話せば済むことまでメールを使用している。しばしば「後でメールで送ってください」と言われることが多いが、これには「今でなくていい」というケースと「監査証跡」のためのケースに分けられると思う。メールが大量に届く現在、半分は不要なメールであり、それを仕分けする時間はまったく無駄な時間である。会って伝えられるものは会って伝えようと述べた。
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