こうした成長の軌跡をもって株式を公募・売り出したわけだが、上場の目的は至極あたりまえで、認知度の向上と資金調達だ。笠原氏は「SNSでトップだとしても、mixiはもとよりSNS自体がまだまだ知られていない」と述べた。そして、「1997年にヤフーが上場して一気にインターネットが人々に広く知られ、理解されたように、業界のリーダー企業が上場することで市場自体の知名度が向上するきっかけになる」と続けた。
また、今回の公募で得た資金は約64億円だ。このうち約11億円をサービス強化のためのシステム開発や、会員数やアクセス数の増加に伴うサーバ設備の増設などに充てる。そして、約3億円を事業所の拡充に伴う設備投資に充てる。残りはまだ50億円もあるが、笠原氏は「具体的な使途が決まっていないため、資金需要が生じるまで預金などで運用する」としている。つまり、今後の事業展開によっては資金が必要になるので、それまではプールしておきたいということとも受け取れる。
そこで、もっとも重要となる事業展開について笠原氏は、「既存のユーザーの満足度を最大化していくことにもっとも力を入れていく」とした。これがさらなるユーザー数やPV数の向上につながるというわけだ。
その次に重視している点としては、SNSの特性を活かした広告効果の高いメニューを開発し、広告価値を最大化することを掲げた。Find Job !では、自社媒体であるmixiに広告を掲載することで求職者を獲得すると共に、広告宣伝費を抑制することを実現している。
mixiでも広告価値を高めてはいくが、mixiの収益構造は変化させていくかまえだ。現在mixiの売上高は82%が広告収入で、18%がユーザーから直接徴収するプレミアム収入(mixiにオプション機能を付けることで月額315円を課金)となっている。このプレミアム課金の比率を上昇させていくことを目指す。
もう1つ、中長期的に重要視している展開として「新しい収益モデルの創出」を挙げた。既存事業では、mixiでデジタルコンテンツを販売したり、ユーザー間の売買やBtoCのECを展開したりすることを描いている。この一方で、Find Job !、mixiに続く新規サービスも生み出していくかまえだ。こうした具体的な事業展開や、ヤフー、グリーなど他社との競合については、以前に掲載したインタビューで詳細が語られている。
今後、事業展開していく基本戦略は以上の3つで、これらを実現するために笠原氏は「他社との業務提携や資本提携、場合によってはM&A(企業買収・合併)も視野に入れていく」と語った。たしかにこれまでのミクシィは、笠原氏が個人的に出資するケースはあったが、会社としてM&Aなどとはほとんど無縁だった。ただし、あくまでも本業を伸ばしていくことを目的とし、イメージとしては大きな企業を買収するというより、自分たちにはない技術や開発力を持っている企業が対象となる。
そうはいっても、ミクシィも株式を公開したため、逆に買収のターゲットになることもあり得る。これについて、笠原氏は「特に買収の防衛策などは考えていない」とした。
こうした事業戦略の一方で、株主に対しては「基本的には事業戦略にもとづいてサービスを強化し、これに伴って業績を成長させていけばおのずと株価の上昇というかたちで貢献できると考えている」と述べた。いずれ、配当金も出していくかまえだ。株式分割については「買いやすい株価帯を意識して将来的に考えていきたい」とした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力