「iTunes Music Store(iTMS)」の日本向けサービス開始から1周年を迎えたアップルコンピュータでは現在「Summer of Music」というキャンペーンを展開中だが、CNET Japanではこれにあわせて来日中のChris Bell氏(Apple ComputerのiTMS担当ディレクター)にインタビューを行った。
Bell氏はまず、これまでの日本での取り組みを振り返り、サービス開始当初には約100万曲だった楽曲ライブラリがこの1年間で約200万曲へと倍増したことや、楽曲の提供者についても松任谷由実やスピッツを含む大物アーティストの参加を得られたことを成果として挙げた。
その一方で、iTMSでは日本の新人アーティストの楽曲を週替わりでピックアップし、楽曲を無料で提供するといった取り組みも行ってきており、その結果ユーザーとアーティストとの接点を広げることができたと、Bell氏は述べた。
Bell氏によると、日本市場はiTMS全体のなかでも重要なポジションを占めるサービスに成長してきているが、この成功の背景には、専任チームを置いて国内アーティストを中心とした品揃えを充実させてきたことや、「買いやすさ」を高めるために「iTunes Music Card」をセブン・イレブンや大型家電量販チェーンを通じて販売するなど、日本市場に向けた独自の取り組みを進めたことなどの要因もあるという。
またアップルでは、国内各地のApple Storeで多くの著名アーティストによるライブを開催するなど、消費者により多くの音楽と接する機会を設けてきている。先に触れた「Summer of Music」もこの延長線上にある取り組みであり、このなかには「Summer Sonic(サマーソニック・ゼロシックス)」のサポートなどが含まれる。このSummer Sonicについては、同社は8月12-13日に東京と大阪でそれぞれ行われるライブの来場者に、iTMSから無料で3曲ダウンロードできる権利のついた特製のSummer Sonic iTunesカードを配布するという。
ウェブ上ではこのところ、MySpaceをはじめとするソーシャルネットワークサービス(SNS)の台頭が著しく、それらが有力な音楽配信チャネルになるのではないかとの指摘も見られる。そこで、この点について「(そうしたSNSが)iTMSに対して潜在的に脅威を及ぼす存在になるか」と質問したところ、Bell氏は実情はまったく反対で、SNSとは「相互補完的」な関係を築いていると答えた。そして、全米第2位のユーザー数を持つといわれる「Facebook」と共同で大規模なプロモーションキャンペーンを展開していることや、日本でもミクシィがiTMSのアフィリエート制度を導入したこと、さらにMySpaceからのリンクでiTMSにアクセスしてくるユーザーの数も非常に多いことなどの具体例を挙げた。
また最近ではiPod/iTMSの牙城切り崩しをねらう新たな動きも目立ってきており、特に携帯電話網を通じた音楽配信については、携帯電話最大手のNokiaがLoudeyeを買収し、新たな音楽配信サービスの立ち上げ計画を発表したばかりだ。しかし、Bell氏は「たしかに端末の販売台数では、iPodよりも音楽対応ケータイのほうが多いだろう。だが、実際にそれらの電話機で音楽を聴いている人がどれくらいいるのか」と疑問を呈した。そして、「多くの人々が『音楽を愉しむにはiPodがベストと考えており、その証拠にiPodとケータイの両方を持ち歩いている』」と指摘。「われわれは、引き続き最高の製品と経験を提供していきたい」とだけ述べて、全世界の音楽ダウンロード市場で圧倒的な優位を誇るサービスの責任者としての余裕をうかがわせた。
なお、先のWorldwide Developer Conferenceでは基調講演のなかで次期Mac OS X「Leopard」のプレビューが行われたが、iTunesの機能改善や新機能追加については特に発表がなかった。この点に関し、Bell氏は「具体的な事柄は明らかにできないが、今後も期待していただきたい」とした。
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