ラスベガス発--米国では最近、ハイテク企業が宗教がかっている。
ソニー、松下電器産業、Avid、日立製作所といったハイテク企業が、急成長する「教会関連技術」市場で利益を上げるための取り組みの一環として、教会の布教活動を支援している。
ここ数年、牧師らは、礼拝堂に大画面表示システムや大型ビデオディスプレイを導入し、まるでApple ComputerのSteve Jobsが製品を発売する時のような派手な演出をしている。そのハイテク技術を駆使した説教は、MTV、ビデオゲーム、インターネットに対抗する存在になりつつある。そして、その傾向はさらに拍車がかかり、今や教会では、複数代の最新式のウェブカメラを使って遠隔地の信者向けにウェブ放送を行ったり、最新の音響システムを駆使して崇拝エリア内の音量や音響の向上を図っている。
「まるでロックコンサートに行くような感覚だ」と語るのは、映像音響処理技術者のPatrick Teagarden氏だ。Teagarden氏のように、教会を主要顧客とする映像音響処理技術者が最近増加傾向にある。「1つ確かなことは、メディアを利用することにより、人々の注目を集めやすくなるということだ。」(同氏)
この教会関連技術市場の急成長ぶりが示されたのが、米国ネバダ州ラスベガスで4月24日から27日まで開催された電子メディアカンファレンス「National Association of Broadcasters(NAB) 2006」である。NABでは今回初めて、教会を顧客とするハイテク企業や家電メーカー向けの展示エリアが設けられた。
同カンファレンスでは、「Radio Frequency Interference & The Church Sound System(無線周波妨害と教会の音響システム)」「Worship Software to Expand Your Media Presentation(メディアプレゼンテーションを拡大するための崇拝ソフトウェア)」「Microphones & Religious Applications(マイクロホンと宗教的アプリケーション)」といったタイトルの会議が開かれた。
教会関連技術市場の市場規模に関する情報の入手は困難だが、Mark Chaves氏の著書「Congregations in America」によると、現在米国内に存在するキリスト教会、ユダヤ教会、イスラム教寺院の総数は30万件以上に上るという。それらの大半は信者数が200〜300人程度の小規模な教会だが、2万5000人の信者を抱える教会も2〜3件あるという。
恐らく、米国でハイテクを駆使する教会の最たる例は、ヒューストンにあるLakewood Churchだろう。同教会では2005年に、1週間に3万人という礼拝出席者数を記録した。そのためJoel Osteen牧師は、かつて全米プロバスケット協会(National Basketball Association:NBA)のHouston Rocketsがホームとして使用していた元バスケットボール場を礼拝堂として使用する必要が生じた。
Osteen牧師は、3台の巨大なビデオディスプレイスクリーンを導入し、そのスクリーンに牧師の映像を映し出すことによって、会場の最上階の席に座っている人々も牧師の姿を見られるようにした。さらに、その会場ではAltman Micro Stripと呼ばれる線形照明がOsteen牧師の説教壇の背後にある壁や回転する巨大な地球儀を照らしている。このAltman Micro Stripは、一連のタングステンハロゲンランプを使って様々な照明効果を演出する。
またLakewood教会は、HDTVへの移行を計画しており、最近、ソニー製の高画質カメラを8台購入した。CIOinsight.comによると、同教会が所有する映像および上演用設備の価値はおよそ400万ドルに上るという。
またCIOinsight.comによると、イリノイ州サウスバーリントンにあるWillow Creek Community Churchでは、年間予算総額2700万ドルのうち100万ドルをハイテクに投資しているという。
教会によるこの種の(ハイテク)投資が、新たな「信者たち」を引き付けている。
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