MicrosoftやAOLと対抗していくためには、創造的にならなければだめだ。
Mozillaもそうした方向を目指して、2006年に入り「Firefox」ウェブブラウザを宣伝する映像制作コンテストを開催した。
「Firefox Flicks」と銘打たれたこのコンテストは、参加者の作品のプロダクションバリュー、創造性、台本および脚本、サウンドトラックやキャッチソング、Firefoxロゴの使い方などを審査するもので、280を超える応募があった。
米国時間4月28日、Mozillaはコンテストの勝者を発表し、カリフォルニア州ベニスに住むPete Macomber氏の「Daredevil」という作品が1等となった。同作品には、みずからを「命知らず(daredevil)」と呼ぶ、14歳の女性サーファーのElla Hubleyさんが登場する。Hubleyさんがスケートボードに乗って海岸へ行く映像に続いて、「わたしのもう1つのブラウザはサーフボード」というコピーが表示される作品だ。
Mozillaは以前にも、Microsoftの「Internet Explorer」やAOLの「Navigator」といったブラウザと競合するFirefoxのマーケティングに、草の根的なアプローチを採用したことがある。例えば2004年11月には、Firefoxの支持者らがデザインし、寄付金を集めて制作した全面広告が、The New York Timesに掲載された。
Mozillaの映像コンテストは、一般の愛好家の力を借りてブランドイメージを向上させようとする、インターネットの利点を生かした技術企業によるマーケティング戦略の最新例と言える。
広告の専門家によると、ここ数十年にわたり、多くの米企業がこの種のコンテストを開催してきたという。こうした試みは、参加者間のブランド認知度を高め、自社製品に対する消費者のイメージを企業経営陣が把握するのに役立つばかりでなく、新しいスタイルのマーケティングを生み出す契機にもなる。
現在ではここにインターネットが介在するようになり、新たな様相を呈し始めている。ユーザーが作ったコマーシャルがオンライン上で人気を呼び、ある人物がその作品をウェブを介してほかの人物へ紹介するという形で、宣伝が急速に広がるようになったのである。こうした現象は「口コミマーケティング」と呼ばれている。
今回の口コミマーケティングは、Mozillaだけでなく、消費者側に立つMacomber氏にも利益をもたらすものであったようだ。現在長編映画の制作に取り組んでいる33歳のMacomber氏は、今後は「Daredevil」を名刺代わりに使うことができると述べている。同作品は、ほかの参加作品とともにMozillaの2006年度マーケティングキャンペーンに使用されるので、高い露出が見込めるのである。コンテストの1等賞品は、プロ用のカメラや映像制作機器などを購入できる5000ドル相当の商品券だった。
「このコンテストの存在は、Mozillaのサイトで知った。最近は、映画制作に関する情報をウェブで収集している」(Macomber氏)
もっとも、消費者から宣伝のアイデアを提供してもらうという試みは、常にうまくいくとはかぎらない。General Motorsは2006年3月、同社のSUV(Sports Utility Vehicle)車「Chevy Tahoe」のコマーシャルをだれがいちばんうまく作れるかというコンテストを開催した。ChevyApprentice.comを訪れたユーザーが、さまざまなサウンドトラックや、各地を走るTahoeの様子を撮影したビデオクリップから好きなものを選んでコマーシャルを作るというのが、このコンテストの趣旨だった。参加者は、表示させるテキストを自分で書くことも可能になっていた。ところが、多くの人々がここぞとばかりに、「ガソリン喰らい」のSUVや同社自身やイラク戦争について非難するメッセージを書き込む結果となったのである。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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