[ニュース解説] インターネット検索最大手のGoogleが、Amazon.comの検索子会社A9で最高経営責任者(CEO)を務めるUdi Manberを引き抜いたことで、一部の専門家からはAmazonの検索に対する取り組みを疑問視する声があがっている。
Manberは、今週末付けでA9を退社した後、Googleのエンジニアリング担当バイスプレジデントに就任する。同氏がAmazonを去ることは米国時間7日遅くに発表された。人気度で上回るGoogleやYahooと同じく、A9は一般的なウェブ検索サービスを提供しており、同社の検索エンジンは、同社サイトにあるウェブ検索や、Amazon.comのサイト検索に使われている。
「事業運営のトップに立つ人物を失うことで、A9の検索に対する信頼性が損われるほか、同社の取り組みに対する疑問もこれまで以上に大きくなる」とSearch Engine Watch編集者のDanny Sullivanは指摘する。「全体としてこの動きはAmazonの検索に対する見通しが芳しいことを示す兆候ではない」(Sullivan)
Manberのコメントは得られなかった。
「Manberは会社の経営よりも、15年間携わってきた検索分野での仕事に本当に戻りたがっている」とAmazonの広報担当Craig Bermanは述べている。
Manberの退任をうけ、Amazon観測筋のなかには、A9による検索の取り組みが同社にとって単なる実験なのか、それともGoogleやYahooから電子商取引での縄張りを守るための動きなのかと疑問を投げかける者もいる。
「Amazonは間違いなく面白いものを構築したが、それは存在するだけで役に立っていない」と消費者調査コンサルティング会社BuzzMetricsのGary Stein(クライアントサービス担当ディレクター)は述べている。「A9の頭脳ともいえる人材が同社を離れているとしたら、彼らがどんな機能の開発に取り組んでいるかといったことではなく、本当の計画がどんなものであるのかを知りたくなる」(Stein)
Amazonは2002年にManberをYahooから引き抜き、「Chief Algorithms Officer(最高アルゴリズム責任者)」と称する独自の肩書きを与えたが、この肩書きは「Introduction to Algorithms-A Creative Approach(「アルゴリズム入門--独創的アプローチ」)」と題する本の著者に相応しいものだった。翌年、Manberは検索部門の責任者に昇進し、2004年9月にサービスを開始したA9サイトの立ち上げを指揮した。
Manberは、1990年代後半にYahooのチーフサイエンティストに就任するまで、アリゾナ大学でコンピュータサイエンスを教えていた。また同氏は「Agrep」と「GLIMPSE」という2つのソフトウェアを開発したメンバーの1人でもある。
Manberの元で、A9はいくつかの他にはない機能を開発したが、そのなかにはローカル検索や地図、道案内に使える街頭写真などがある。また、AmazonではGoogleと競合するような文脈ベースの広告配信プラットフォームの開発に取り組んでいるとの噂も流れている。
Amazonは高い評価を持つManberを雇い入れて自社のサービス強化を図ったが、一般のウェブユーザーの間でA9の人気に火がついたことはなかった。Nielsen/NetRatingsの調査によると、12月時点での米国検索市場におけるA9の人気度は27位で、全体の0.1%に過ぎなかったという。
「過去1年半の間に、A9の人気が急上昇したことはなかった」(Sullivan)
Googleでは、インターネットの先駆者として知られるVint CerfをMCIから引き抜くなど、IT業界の著名人を集めたり、競合他社の人材を雇い入れるなどのケースが目立ってきている。なかでも最も大きな話題を呼んだのは、MicrosoftからKai-Fu Leeを引き抜いて、自社の中国事業責任者に据えようとした例だが、一時は訴訟に発展したこの争いも最近に和解が成立していた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス