新しいアプローチのファイル共有により、大勢の人々が自らの集めた曲をオンラインで共有できるようになりつつある。しかも、これには費用もかからなければ、訴訟問題に発展する危険もない。
その秘密は、ピア・ツー・ピア(P2P)技術とインターネットラジオの融合にある。複数の企業がこの組み合わせを利用し、個人のプライベートなプレイリストをウェブに自動的にブロードキャスト配信する強力なツールの開発に取り組んでいる。このツールから出力された情報は検索可能なデータベースに集められ、リスナーは自分が聴きたい曲を好きなときにそこから見つけ出せるようになる。
また、不正なダウンロードを防ぐ安全対策も施されているので、著作権も確実に遵守される。しかし、ネットワークの基盤技術が改善し続け、ユーザー数が増え続ければ、同サービスが無料の有線放送のようになる日が来るかもしれない。
今のところ、この分野への参入を検討している企業は少ない。Apple Computer、Virgin Digital、そして新興企業のMercoraやLive 365など、一部の先駆者が需要を見いだし始めたばかりだ。
Appleでは、同社のiTunesミュージックジュークボックスソフトのユーザーがLAN上を流れるプレイリストを共有できるようにしている。対照的に、Mercoraでは世界中の約8000の放送局がつながるウェブベースのネットワークを運営している。ここでは各放送局が独自に工夫を凝らしてプレイリストを作成し、最大17万5000〜20万人のリスナーにインターネット経由で配布している。
Mercoraのソフトも個々のハードディスクから自動的に曲をストリーム配信するようになっており、ネットワークの各メンバーが放送局になる。
MercoraのCEO(最高経営責任者)、Srivats Sampathは、「Googleがウェブで果たした役割を音楽業界で果たしていく」と語っている。
P2Pの仕組みを使ったネットラジオは、著作権法に抵触せずにウェブをオンデマンド型のジュークボックスに変えることを狙ったさまざまな取り組みのなかで最新の一歩といえる。過去にはこうしたプロジェクトが原因でレコード業界との間に緊張が高まり、同業界幹部らが裁判を起こしたことがあった。その結果Napsterは活動停止に追い込まれ、また現在でも個人のファイル交換利用者らを相手取った訴訟が起こされている。
ネットラジオの世界では、このような裁判関連の苦労はあまり耳にしない。だが音楽業界は、CDや音楽ダウンロードの売上低下につながる可能性のある双方向サービスの抑制にも乗り出してきている。
ドットコムブームの頃には、Launch MediaやMusicmatch(いずれも現在はYahooの子会社)、MTViなどの各社が、双方向ラジオサービスの展開で競い合っていた。これらのサービスではリスナー側に大きな力が認められていたが、その点が問題となり、後にレコード業界との訴訟に発展することになった。
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