米連邦判事は米国時間10日、児童ポルノを扱っている疑いのあるウェブサイトへのアクセスを遮断するようISPに義務付けて物議をかもしていたペンシルベニア州法について、憲法違反であるとの判決を下した。この判決により、オンラインポルノ規制の強化を求める同法の支持者が敗訴したことになる。
同法の下で州は、不適切と思われるウェブサイトへのアクセスを許可したISPに対し、刑事責任を問うことができる。民主主義と技術のためのセンター(CDT)や米国自由人権協会(ACLU)などの公益団体は、児童ポルノを含まない多数のウェブサイトに対するアクセスまで遮断されてしまうことから同法は違憲であるとして、1年前に訴訟を起こしていた。
連邦地裁のJan DuBois判事は102ページにわたる判決文のなかで、「この法律のおかげで、児童ポルノの制作や、制作に付随して起こる子供の性的虐待が減少したという証拠はほとんどない」と述べ、「その一方で、同法の施行によって米国合衆国憲法修正第1条で保障された言論の自由が大きく抑圧されたという証拠は数多くある」と付け加えた。
同法は州法だが、言論の自由を主張する人たちは同法について、適用範囲があまりに広いうえ、他の州がオンラインブロック手法を適用する上で前例となってしまうと主張していた。
2002年にMCIは、同法を侵害していると見なされる5つのウェブサイトへのアクセスを阻止するよう判事に求められ、当時のペンシルベニア州司法長官Mike Fisherからの圧力に屈した。ISP各社は、ペンシルベニア州の契約者のみを対象にこれらのウェブサイトへのアクセスを阻止するのは不可能なことから、北米地区の全契約者のアクセスを遮断している。
Fisherは約500通の書簡をさまざまなISPに送り、リストにあるウェブサイトへのアクセスを阻止するよう求めた。供述記録によると、America Online(AOL)とVerizon Communicationsは、Fisherの命令により、何十万件もの無害なサイトへのアクセスまで遮断されてしまったと述べている。
この点についてペンシルベニア州側は、ISPは言論の自由を侵害することなく特定のウェブサイトへのアクセスをブロックすることができたと主張している。
今年初めに提出した訴訟事件摘要書のなかで、ペンシルベニア州は「URLは、人でもなければ、現実のフォーラムでもない。数が限定された日用品でもない。URLとは、アルファベットと数字を組み合わせて作った表面的なラベルだ。URLは数に限りがない。URLを1つを使用停止にしたからといって、言論の自由は損なわれない。URLが使用停止に追い込まれた者は、別のURL(使用不能になったURLに似通ったURLであることが多い)を用意すれば、また発言を行うことができる」と主張している。
言論の自由を主張する人たちは同判決を賞賛している。
「法の執行当局者は、児童ポルノを遮断するために合法的なインターネットコンテンツまでブロックするのではなく、児童ポルノの発生源--制作・配信を行う犯罪者を追跡すべきだ」とCDTのInternet Standards, Technology and Policy Project担当ディレクターJohn Morrisは声明文で述べている。
ペンシルベニア州検事総長事務局は、今回の判決に対して失望感を表明しており、裁判所の意見を検討して控訴するかどうかを決定すると述べている。
司法長官Jerry Pappertの広報担当Sean Connollyは、「われわれは法廷の裁定を残念に思っている」と述べ、「この法律は、インターネット上にある児童ポルノサイトへのアクセスを阻止する目的で制定されたものだ。われわれは、同法がペンシルベニア州では機能していたと信じている」と付け加えた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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